研究実績の概要 |
【緒言】前年度は尿蛋白陽性と判定された生徒の残余検体を用い, 尿蛋白(uTP)と尿クレアチニン(uCr)の定量検査による尿蛋白の偽陽性率を検討した。その結果、従来の尿定性法では尿蛋白偽陽性率が非常に高いことが判明したが、尿蛋白定性陰性者は検査対象でないため感度特異度は算出できなかった。このため本年度は2次検尿の対象となった小学校の全生徒の残余検体を用い、uTPとuCrの定量検査にくわえ、近年 検診検尿で注目されている尿試験紙による尿蛋白クレアチニン比(P/C)を測定し、各々の陽性判定基準を変化した場合の尿蛋白検出における感度特異度を測定した。尿蛋白陽性はuTP/Cr 0.15g/gCr以上とした。また県教育委員会から提供を受けた学校生活管理指導表の診断名を用い, 判定基準の変更による腎炎疑い・管理中児の検出状況の変化を調査した. 【結果】小学校2次検尿の対象者: 455名(うち尿蛋白陽性者は49名)。 うち学校生活管理指導表で"腎炎疑い・管理中”の診断名が記載されていた生徒: 5名 。 <尿定性> (1+)が陽性判定基準の場合:陽性31名(感度 63.3%, 特異度 7.1%), 腎炎診断偽陰性2名. (2+)が陽性判定基準の場合:陽性12名(同24.5%, 同0%),偽陰性 4名. <P/C> (1+)が陽性判定基準の場合:陽性43名(同87.8%,同35.5%), 偽陰性1名. (2+)が陽性判定基準の場合:陽性16名(同32.7%,同8.1%), 偽陰性4名. 【考察】小学生の2次検尿を対象とした検討では、P/C(1+)以上が尿蛋白検出に優れ,腎炎診断の見逃しも少なく, 従来の尿定性法よりも優れている可能性が示唆された。 【今後の研究の展開】数年間同様の検討をおこない、慢性腎炎の存在が疑われる尿所見異常検出力(特に尿蛋白)に優れる学校検尿の検査項目の組み合わせを明らかにする。
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