本研究は内視鏡治療で根治が得られた食道癌患者の死因を、鳥取県内全域の多施設で後ろ向きと前向きの二つの群で検討するもの。予後調査にはがん登録を利用して、脱落例がないように工夫する。 本研究の後ろ向き検討部分の、上記3施設で、2008年度から2016年度に行われた食道癌内視鏡治療例は255病変・214症例が登録されたが、適応外病変(SM2以深、もしくは脈管侵襲陽性)が21病変含まれており、除外した234病変を解析した。さらに5年生存率が検討できたのは、脱落例1例を除く233病変・193症例で、このコホートで予後と死因を解析した。 内視鏡的治療で根治と診断された上記食道癌症例の16例が5年以内に死亡しており、死因の内訳は、他臓器癌による死亡が8例、癌以外の併存疾患による死亡が8例であった。治療適応内病変の治療症例でも、術前から併存していた頭頸部癌、胃癌の進行による死亡が大きな要素を占めた。内視鏡治療適応内病変症例全体では5年生存率は91%であるが、これは胃癌や大腸癌における内視鏡治療適応病変での治療成績と比べてかなり下回ると考えられる。食道癌を発症する患者背景、特に飲酒や喫煙といった生活歴や、重篤な併存疾患が他の癌腫に比べ多いため、他癌死・他病死が多いと考えた。このように、本研究の動機づけとなった、根治的内視鏡治療が可能であった早期食道癌症例が、食道癌以外の原因で高率に、比較的早期に亡なっているのではないか、という予測が証明される結果となった。 前向き検討部分に関しては、2021年度新たに61病変の追加があった。2008年度から2021年度までの全ての期間で重複例を再計算したところ、全症例は509病変、401例が登録されていた。2016年以降の追加症例に関しての予後追跡率は極めてよく、1例を除いて予後追跡が出来ていた。治療症例数の増加により解析に十分な症例数が得られると考えている。
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