研究課題/領域番号 |
17K09113
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
平川 洋一郎 九州大学, 大学病院, 助教 (60645638)
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研究分担者 |
二宮 利治 九州大学, 医学研究院, 教授 (30571765)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 疫学研究 / 危険因子 / 遺伝子 / 脂肪酸 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、追跡調査の一環として久山町で循環器健診を実施し、問診と血液検査、医師の診察により糖尿病や耐糖能異常の有無を判定し、治療の有無や開始時期、合併症や並存疾患の有無について調査を行なった。健診未受診者、転出者についてはアンケート郵送や電話調査、訪問にて病歴を確認した。必要に応じて、診療情報を収集し詳細な検討を行ない、死亡時には剖検を行った。以上の調査から得られた臨床情報を整理し、糖尿病発症に関する生存時間解析用のデータベースの整備を行った。 統計解析として、2002年の久山町のゲノム研究対象者のうち、遺伝上の近親性が高い者を除いてGenotype Imputationを行い、80歳以上の者、糖尿病の既往者を除いた1,042名において、糖尿病感受性遺伝子の集積と10年間の糖尿病発症に及ぼす影響を、Cox比例ハザードモデルを用いて検討した。84の糖尿病感受性遺伝子を用いて遺伝的リスクスコア(Genome risk score: GRS)を作成し、その5分位数で対象者を5群に分け、10年間の糖尿病発症との関係を検討したところ、性年齢調整後の累積発症率は、第1群9.4%、第2群9.3%、第3群13.0%、第4群15.1%、第5群22.1%とレベルの上昇と共に高まった。血糖値を含む既知の糖尿病発症の危険因子で多変量調整を行っても結果は変わらなかった。次に、既知の危険因子のみを含むモデルとGRSを加えたモデルで予測能を比較したところ、GRSを追加することで、糖尿病発症の予測能は有意に高まった。 84個のSNPを基に作成したGRSは、糖尿病発症の有意な危険因子で、糖尿病発症の予測を改善した。本研究成果は、Journal of Clinical Endcrinology & Metabolismに採択された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、追跡調査を実施し、追跡期間を延長したデータセットの整備を行い、糖尿病感受性遺伝子の集積と糖尿病発症の関係を検討し、その結果を論文として発表した。現在は、脂肪酸と糖尿病発症についての検討を行っており、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
追跡調査によって得られた情報を基に、統計解析に用いるデータベースを作成して、オメガ3脂肪酸やトランス脂肪酸の一つであるエライジン酸が糖尿病発症に与える影響を検討する。 また、詳細な統計解析を行うためには十分な症例数が必要であるため、引き続き追跡調査を行い、糖尿病の発症の有無を継続して調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会で発表するため、旅費として使用する。
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