令和元年度は2005年にADLが完全自立していた者を2017年まで12年間追跡したデータセットを作成し、地域高齢者における健康寿命達成の危険因子・防御因子について検討した。 【方法】2005年の時点でADLが完全に自立した65~89歳の地域高齢者654人を12年間追跡し、ADLが12年後に低下していなかった者を健康寿命達成とした。ADLはBarthel Indexを用いて評価し、100点をADL低下なしと定義した。健康寿命達成者の頻度を全体、男女別、年齢階級別に検討し、健康寿命達成者と非達成者の臨床背景因子(性別・年齢・身体状況・社会的因子)について両群で比較した。続いて各背景因子を暴露因子とし、ロジスティック回帰分析により健康寿命達成との関連を検討した。続けてBackward法によって健康寿命達成を予測する最適なモデルを抽出した。モデルの評価にはC統計量を用いた。 【結果】対象者654人のうち12年後に健康寿命を達成していた者は68.0%であった。男女を比較すると男性75.4%、女性63.7%であり、男性で有意に頻度が高かった。年齢階級別に検討すると、65~69歳83.6%、70~74歳68.8%、75~79歳50.8%、80~84歳42.0%、85~89歳25.0%と年齢が上昇するとともに達成率は直線的に低下していた(p値<0.001)。背景因子の中で、健康寿命を予測するモデルの危険因子として選ばれたものは、高年齢、女性、糖尿病あり、認知症あり、うつ傾向あり(GDS得点6点以上)、喫煙あり、運動習慣なしであった。この予測モデルのC統計量は0.72であり、健康寿命達成の判別能は良好であった。以上の事から、地域高齢者において自立して長生きするためには、糖尿病、うつや認知機能低下の予防、喫煙や運動習慣の是正が有効であることが示唆された。以上より本研究は研究計画通りに遂行できた。
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