研究課題/領域番号 |
17K09132
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研究機関 | 大妻女子大学 |
研究代表者 |
清原 康介 大妻女子大学, 家政学部, 講師 (80581834)
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研究分担者 |
中田 研 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (00283747)
北村 哲久 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (30639810)
祖父江 友孝 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (50270674)
喜多村 祐里 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (90294074)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 院外心停止 / 学校 / 児童 / 生徒 |
研究実績の概要 |
2018年度は、日本スポーツ振興センター(JSC)の災害共済給付データから、2015年度分の院外心停止情報を取得した。これを総務省消防庁の全国救急蘇生統計と結合し、前年度作成したレジストリに追加した。 本レジストリを用いて、2008年4月~2015年12月に全国の学校管理下で発生した児童生徒(小学校・中学校・高等学校・高等専門学校)の院外心停止症例の解析を行った。居合わせた市民によってAEDを貼付された心停止患者は8年間で62%から87%に増加していた。これに伴い、社会復帰できた患者も8年間で38%から58%に増加した。また、AED貼付と心肺蘇生が両方行われた場合には、何もされなかった場合に比べて約2.5倍社会復帰できた割合が高かった。 次に、スポーツ活動中に発生した心停止症例の特徴と転帰について分析を行った。学校において、スポーツ中の心停止は児童生徒の全心停止の約半数を占めており、大半が非外傷性の心停止によるものであった。スポーツ種目としては、長距離走(22%)、サッカー・フットサル(13%)、バスケットボール(12%)が多かった。学校種別にみると、小学校では水泳(53%)、中学校と高校では長距離走(23.0%・22.4%)が多かった。居合わせた市民によってAEDが貼付されたのは80%、社会復帰できたのは53%であった。 更に、全国救急蘇生統計を用い、学校内外で発生した6歳~17歳の院外心停止症例を対象に、居合わせた市民による救命処置の実状とそれに伴う患者予後の年次推移を明らかにした。市民によるAEDショックを受けた患者は2005年には0.1%であったが、2014年には6%に増加した。これに伴い、社会復帰できた患者は2005年に5%であったのが2014年には9%に増加した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、本年度はJSCより2015年度(2015年4月~2016年3月)の災害共済給付のデータを入手し、同期間の総務省消防庁の救急蘇生統計と個人結合した。このデータを前年度構築した我が国の学校管理下で起こる院外心停止の発生状況から予後までの全体像が把握できる前向きレジストリに追加した。前年度までの成果を含め、本レジストリと児童生徒の院外心停止の現状について、プレホスピタル・ケア誌および臨床スポーツ医学誌に解説を掲載した。 本年度構築したレジストリを用いて、2008年4月~2015年12月に全国の学校管理下で発生した児童生徒の院外心停止症例に対するAEDの使用実態の把握および効果の検証を行った。本研究成果については、EP Europace誌に原著論文として発表した。 また、同期間にスポーツ活動時に発生した児童生徒の心停止症例の特徴と転帰についての記述疫学研究を行った。本研究成果については、Resuscitation誌に原著論文として発表した他、日本臨床スポーツ医学会学術集会で学会発表した。 また、総務省消防庁の救急蘇生統計の全国データを用い、6歳~17歳の学童・思春期の院外心停止症例を対象に、居合わせた市民による救命処置の実状とそれに伴う患者予後の年次推移を明らかにした。本研究成果については、The American journal of cardiology誌に原著論文として発表した。
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今後の研究の推進方策 |
我が国の学校管理下で発生する児童生徒の院外心停止は年間50例程度であることから、リサーチクエスチョンに基づいて発生状況を把握し、予後因子を探索して結果を公表するためには、より多くの症例を集積することが重要である。2019年度中には2016年分の災害共済給付データが利用可能になるため、研究分担者や研究協力者らと協力して同年の救急蘇生統計と結合する(約50件の見込み)。これらをレジストリに組み込み、さらに分析を進める予定である。 心停止患者の救命のためには、周囲の人々による一刻も早い心肺蘇生術の開始とAEDを用いた電気ショックが必要であるが、現状は十分に行われているとは言えない。そこで、2019年度は心停止の現場に居合わせた市民の救命行為の実施に関わる要因は何かを探索する。とくに、心停止患者の性別や目撃者の属性に焦点を当てて、救命行為の実施状況に関する実態を把握し、より良い心肺蘇生講習のあり方を検討する一助とする。 以上の研究成果は国内外の学術集会ならびに原著論文として発表する予定である。また、Researchmap やResearchgate といった研究者用ソーシャルサイトにおいて研究内容を紹介していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の異動による研究環境の変化により長期出張を伴う国際学会での発表が難しくなっため、学会参加に関わる費用に未使用額が生じた。 次年度の使用計画として、研究を円滑に遂行するために、研究分担者、研究協力者、およびデータ提供元との定期的な打ち合わせを行うための旅費を計上した(1か月~2か月に1回程度)。また、研究代表者および研究協力者が研究成果発表を予定しており、そのための旅費も計上した。学術論文作成および公表のため、英文校閲費、学術雑誌掲載費を計上した。その他、研究関連書籍、データ保存媒体等の必要な消耗品購入費を計上した。
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