研究実績の概要 |
本研究では,幅広い年齢層を含む職域集団を対象に,生活習慣病をはじめとする代謝異常の発症を規定する生活習慣などの要因を体格別に比較し,代謝異常発症の背景にある危険因子の体格による違いを明らかにすることを目的とした. 最終年度は,平成30年度までに作成したベースラインのデータセットに,3年後の健診情報を結合し,3年間の体重増加,高血圧や糖尿病の発症を確認した. 13,796名(非肥満者10,496名,肥満者3,300名)を3年間追跡した.3年間で2kg以上の体重増加の発症率は非肥満者32.4%,肥満者32.7%と同等であった.食事バランスの悪い人は良い人と比べて1.07倍,朝の欠食者は毎日朝食摂取をしているものと比べて1.11倍体重増加の発症率が高く,肥満の有無で差はなかった.同様に「食べ過ぎに気をつけている」「野菜摂取を心がけている」「動物性脂肪摂取を控えている」「減塩を心がけている」人は,5~20%体重増加発症率は低かったが,これらも肥満の有無で差はなかった.運動習慣の量・頻度ともに,体重増加発症と関連なく,肥満の有無でも差はなかった. 高血圧,糖尿病の新規発症率は,非肥満者で各々15.3%,3.4%,肥満者で31.7%, 10.0%と肥満者で高かった.一般に,生活習慣に気をつけているものの方が代謝異常の発症リスクが高く,因果の逆転の影響が考えられた.一方で,朝食欠食による高血圧リスクは,非肥満者で1.1倍,肥満者で1.2倍と,肥満者の方が朝食欠食の高血圧発症に及ぼす影響は大きかった.また,食事バランス不良による糖尿病リスクは,非肥満者で0.7倍,肥満者で1.5倍であり,肥満者の方が食事バランスの糖尿病発症に及ぼす影響が大きかった. 体重増加,生活習慣病発症におよぼす生活習慣の影響は,肥満者と非肥満者で一部異なることを明らかとし,体格に応じた生活指導に繋がる重要な知見が得られた.
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