研究課題
DNAのメチル化は、疾病発生に重要な役割を果たすこと示唆されているが、疫学的エビデンスは乏しい。我々は、一般住民を対象に長期追跡コホート研究をおこなっており、平成2~3年時に採取した約1400人の白血球ゲノムDNAを保管している。本研究は、これらのゲノムDNAを利用し、炎症、脂質代謝、糖代謝等に関与する各種遺伝子のDNAメチル化レベルを測定することで、白血球DNAメチル化レベルが、がんや循環器疾患死亡に及ぼす影響を評価し、さらに平成27~28年度に再度、血液を採取できた者を対象に約25年間の各種遺伝子のDNAメチル化レベルの変化について調査を進めている。平成29年度はゲノム全体のメチル化レベルを反映するlong interspersed nuclear element-1 (LINE-1)のDNAメチル化レベルと脂質異常との関連について解析を行い、LINE-1DNAの高メチル化は循環器疾患のリスクと関与する高LDLコレステロールおよび高LDL/HDL比と有意な関連を得た。さらに脂質代謝異常の数が多いほど、LINE-1DNAが高メチル化であった。また、HDLコレステロールの生成に重要な役割を担い、抗動脈硬化的に働くと報告されているATP-binding cassette transporter A1(ABCA1)の遺伝子のDNAメチル化率と血管弾性の指標であるStiffness Parameter βとの関連を解析した結果、正の相関関係を認めた。さらにlipoprotein lipase(LPL)遺伝子のDNAメチル化率と脂肪摂取量との関連についても解析を行い、脂肪摂取量の多い人はLPL遺伝子の高メチル化との関連を認めた。今後も各種遺伝子のDNAメチル化レベルと疾患やライフスタイルとの関連について解析をすすめていく。
2: おおむね順調に進展している
対象者の保存白血球から抽出したDNAを用いて、測定を予定している脂質代謝、糖代謝及び炎症等に関する遺伝子のDNAメチル化レベルの一部解析を予定通り終了した。データベースの作成を行い、ATP-binding cassette transporter A1(ABCA1)の遺伝子のDNAメチル化率と血管弾性の指標であるStiffness Parameter βとの関連について解析し、学会報告を行う等ほぼ計画通りに進展している。
平成29年度から引き続き、各種遺伝子のDNAメチル化レベルの測定とデータベース作成を行う。また作成したデータベースを用いてDNAメチル化レベルとライフスタイルや疾患等との解析をすすめる。解析結果については関連学会等で発表を行い、さらに論文化し学術雑誌へ投稿する。
分析に用いる試薬類の期限などを考慮し、順次に購入した。そのため、次年度に繰り越した。計画通りに分析に用いる試薬等の購入を行っていく。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)
Journal of Atherosclerosis and Thrombosis
巻: 25 ページ: 1231~1239
10.5551/jat.43570