研究課題/領域番号 |
17K09139
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
鈴木 康司 藤田医科大学, 保健学研究科, 教授 (60288470)
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研究分担者 |
山田 宏哉 藤田医科大学, 医学部, 講師 (80610352)
橋本 修二 藤田医科大学, 医学部, 教授 (50148334)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | DNAメチル化 / エピジェネティクス / 分子疫学 / 生活習慣病 / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
DNAのメチル化は、エピジェネティクスの1つであり遺伝子発現の制御に関与し、疾病発生に重要な役割を果たすこと示唆されている。しかし健常者を対象とした疫学的エビデンスは乏しい。我々は、一般住民を対象に白血球中の炎症、脂質代謝、糖代謝等に関与する各種遺伝子のDNAメチル化レベルを測定し、DNAメチル化レベルと生活習慣、およびがんや循環器疾患死亡に及ぼす影響を評価することを目的として解析を行っている。平成30年度は、白血球中のHDLコレステロールの生成に重要な役割を担い、抗動脈硬化的に働くと報告されているATP-binding cassette transporter A1(ABCA1)の遺伝子および生体内のレドックス制御に関与するチオレドキシンの作用を制御するチオレドキシン相互作用タンパク質(thioredoxin-interacting protein:TXNIP)遺伝子のDNAメチル化率を測定し、生活習慣や血清成分値との関連について解析を行った。ABCA1遺伝子のDNAメチル化率はHDLコレステロール値と有意な負の関連を得た。野菜摂取頻度の多い女性では、少ない女性と比べるとABCA1遺伝子のDNAメチル化率が有意に低かった。TXNIP遺伝子のDNAメチル化率は、ヘモグロビンA1cおよび血糖と有意な負の関連を認めた。果物類の摂取が多い女性では、TXNIP遺伝子のDNAメチル化率が高かった。また、野菜や果物類の摂取指標である血清カロテノイド値とTXNIP遺伝子のDNAメチル化率との関連を調査した結果、男性においてTXNIP遺伝子のメチル化率は、血清ゼアキサンチン/ルテイン、β-クリプトキサンチン、α-カロテンおよびβ-カロテン値と有意な正の関連を認めた。野菜や果物類の食生活の相違がABCA1やTXNIP遺伝子のDNAメチル化率に影響を及ぼすことが示唆された。今後は白血球DNAメチル化率と疾患や生活習慣との関連についてさらに解析をすすめていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対象者の保存白血球から抽出したDNAを用いて、測定を予定していた脂質代謝、糖代謝及び炎症等に関する遺伝子のDNAメチル化レベルの一部解析を予定通り終了した。データベースの作成を行い、ABCA1やTXNIP遺伝子のDNAメチル化率について血清成分値や食習慣等の生活習慣との関連について解析し、学会報告や論文投稿を行う等ほぼ計画通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、白血球中の各種遺伝子のDNAメチル化レベルの測定を実施するとともに、データベース作成を行い分析を進める。DNAメチル化レベルと疾患、血清成分および生活習慣との解析をすすめる。解析結果については関連学会等で発表を行い、さらに論文化し学術雑誌へ投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
分析に用いる試薬類の期限などを考慮し、順次購入した。そのため、次年度に繰り越した。今後計画通りに分析に用いる試薬等の購入を行っていく。
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