研究課題
DNAのメチル化は、エピジェネティクスの1つであり遺伝子発現の制御に関与し、疾病発生に重要な役割を果たすこと示唆されているが、疫学的エビデンスは乏しい。我々は、一般住民を対象に白血球中の炎症、脂質代謝、糖代謝等に関与する各種遺伝子のDNAメチル化レベルを測定し、DNAメチル化レベルと生活習慣および疾病との関連について解析を行った。今年度は、測定したABCA1遺伝子、TXNIP遺伝子、HIF3A遺伝子、BDNF遺伝子等のDNAメチル化率と生活習慣や疾病との関連について解析を行った。ビタミンCの摂取量が多い人は、ABCA1遺伝子のDNAメチル化率の低下を介して、血清HDLコレステロール値が有意に高いということが明らかになった。ビタミンCの循環器疾患予防効果をABCA1のDNAメチル化が媒介している可能性を示唆するものであり、循環器疾患予防について新たな分子メカニズムとなり得ると考えている。TXNIP遺伝子のDNAメチル化率は、喫煙者および男性の多量飲酒群で有意に低く、喫煙や飲酒による疾病の発生メカニズムの1つとしての関連が示唆された。また、低酸素誘導因子(HIF)は、肥満やメタボリックシンドロームとの関連が示唆されており、HIF3A遺伝子と肥満との関連について解析を行った結果、CpG1、CpG3、CpG4サイトにおけるDNAメチル化率は、ウエストや内臓脂肪組織量との間に有意な負の関連を示した。さらに脳由来神経栄養因子(BDNF)は神経新生や発達や脳機能と深く関連していることから、BDNF遺伝子のDNAメチル化率と認知機能との関連を分析した結果、中年期においてBDNF遺伝子のDNAメチル化率が注意機能及び遂行機能低下と関連していた。上記遺伝子のDNAメチル化は生活習慣等により変化し、様々な疾患発症との関連が示唆された。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (8件)
The American Journal of Clinical Nutrition
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Nutrition
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