研究課題/領域番号 |
17K09142
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研究機関 | 大阪物療大学 |
研究代表者 |
今井 信也 大阪物療大学, 保健医療学部, 講師 (00783515)
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研究分担者 |
佐藤 斉 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 教授 (90285057)
小縣 裕二 大阪物療大学, 保健医療学部, 教授 (60281127) [辞退]
丹喜 信義 大阪物療大学, 保健医療学部, 助教 (60441573)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ERCP / オーバーテーブル型X線TV装置 / 水晶体等価線量 / 3mm線量当量計 / 白内障 / 放射線防護メガネ / 散乱線防護カーテン |
研究実績の概要 |
オーバーテーブル型X線TV装置による術者の白内障リスクの研究の一部として、本年度はERCP(endoscopic retrograde cholangiopancreatography)における術者の水晶体等価線量をファントムを用いて計測した。 まず、術者の立ち位置における空間線量について電離箱線量計を用いて測定したところ、患者が横たわる寝台の高さが床から85㎝の場合では、140㎝の高さで最大の値を示し、それ以上の高さでは減衰することが明らかとなった。 また、オーバーテーブル型X線TV装置で30分間、X線照射を行った場合の術者の水晶体等価線量を水晶体専用の3mm線量当量計を用いて詳細に計測を行ったところ、X線中心に近い左側の眼で高い値を示し、一回の検査で3.7 mSv / 30 minを計測した。さらに個人線量モニターであるガラスバッチによる1㎝線量当量と70μm線量当量の値において多重比較を行った結果、左眼の3mm線量当量と70μm線量当量の値には有意差が認められた。散乱線の防護策として放射線防護メガネや散乱線防護カーテンを装着した場合、放射線防護メガネでは68%、散乱線防護カーテンでは97%まで、水晶体への線量を低減できる可能性が示された。 これらは「IVR術者の白内障リスクと予防策」と題して第76回日本公衆衛生学会総会、また「Occupational eye dose in endoscopic retrograde cholangiopancreatography using 3 mm equivariant dosimeters -phantom study-」と題してEuropean Congress of Radiology (ECR 2018) において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の研究目的と進捗状況に対し、評価を行う。 本研究の目的は、1. オーバーテーブル型X線TVにおける水晶体被ばくのHp[3](3mm線量当量)による評価、2. 放射線防護具による散乱線防護の最適化、3. モンテカルロシミュレーションによる線量予測、4. 術者の白内障リスクの予測である。 平成29年度は、3mm線量当量計を用いて術者の水晶体等価線量を詳細に計測し、また散乱線に対する防護策として放射線防護具による低減効果を実証する研究を行った。 ERCPにおける術者の水晶体等価線量をHp[3]にて評価することで、従来の水晶体に対する指標であったHp[10]やHp[0.07]との比較が可能となり、3mm線量当量計の有用性が明らかとなった。また、放射線防護具による散乱線の低減効果は、Hp[3]による評価でも有用であることが判明し、使用の推進を促す資料となりうる結果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究として、1)モンテカルロシミュレーションによる線量予測、および、2)新たに検討が必要となった術者の向きや照射野による線量変化について研究を進める。 1)モンテカルロシミュレーションによる線量予測は、前年度に行ったERCPにおける実験環境をコンピュータ上で再現し、モンテカルロシミュレーションにより術者の水晶体等価線量の推定を行う。 2)新たに検討が必要となった術者の向きや照射野による線量変化については、術者の顔の向きをX線TV装置に向かって90~180°方向に30°間隔で変化させた場合の水晶体等価線量についての計測を行う。また、X線照射野を18×18㎝から34×34㎝までの4段階に変化させた場合について同様の計測を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者の研究用物品と平成30年2月28日から3月4日に開催されたヨーロッパ放射線学会にて発表するための研究分担者1名分の旅費として準備していたが、研究分担者が1名外れたため未使用となった。 本未使用分の研究費は、本研究において新たな追加実験が必要とされる項目についての実験材料の購入に使用する。追加実験は、術者の顔の向き及びX線照射野の違いによる水晶体等価線量の変化について3mm線量当量計を用いて計測を行う。
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