研究課題/領域番号 |
17K09146
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
楢崎 兼司 福岡工業大学, 社会環境学部, 准教授 (70549477)
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研究分担者 |
熊谷 秋三 九州大学, 基幹教育院, 教授 (80145193)
本田 貴紀 九州大学, 医学研究院, 学術研究員 (30773353)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 要介護予防 / 運動疫学 / 身体活動疫学 / 健康寿命 |
研究実績の概要 |
高齢者の要介護予防はまさに喫緊の国家的課題である.本研究では,福岡県糟屋郡篠栗町在住の高齢者を対象とする8年間の前向き観察コホート研究を通して,客観的に評価された日常の身体活動および座位行動と要介護認定との関連,および「健康づくりのための身体活動基準2013」を満たす身体活動(強度を問わず10メッツ・時/週)の実践と要介護認定との関連を明らかにすることを目的としている.この目的に即した平成29(2017)年度の主な研究実績としては,①追跡調査データの整備,②身体活動および座位行動に関する客観的曝露指標の規定とそれら指標を用いた実態の記述,そして,③仮説検証モデルの構築が挙げられる.①に関しては,これまでの追跡調査を当該年度も継続して実施し,要介護認定情報および異動情報(死亡・転出)について,平成29(2017)年3月末までの約6年間のデータセットを整備した.②に関しては,ある特定の時間継続する強度別身体活動および座位行動の1日あたりの回数や合計時間,さらには,身体活動基準2013の高齢者向け基準(強度を問わず身体活動を10メッツ・時/週もしくは毎日40分)に対する適合の有無など,身体活動および座位行動に関する新たな暴露指標を規定した.また,実態としては,解析対象となる高齢者の約20%が10分以上継続する中高強度身体活動を1日当たり30分以上行っていることなどが分かった.③に関しては,上記①で記した約6年間のデータセットを用いて,潜在的な交絡因子の影響を考慮した上で,身体活動・座位行動を曝露因子,要介護認定をアウトカムとする検証モデルのベータ版を構築した.このモデルを用いて検証した結果,ベースライン調査時の中高強度身体活動は約6年間の要介護認定と有意に関連することが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画の通り,追跡調査データの整備を継続して実施することができ,8年間の前向き研究の実現に向けた進展を得ることができた.また,当初研究計画における【研究1】「身体活動および座位行動の多寡や変化に関する客観的曝露指標の規定とそれら指標を用いた実態の記述」に関しても,複数の新規指標を規定した上で実態を記述することができ,一定の成果を得ることができた.さらに,次年度以降に予定していた【研究3】「仮説検証モデルの構築および仮説の検証」に関しては,前倒しで着手することができた.以上のことから,自己点検において本研究はおおむね順調に進展していると評価した.
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今後の研究の推進方策 |
今後も8年間の前向き研究の実現に向け,追跡調査データの整備を継続して実施するとともに,その整備作業の効率化・時間短縮を図るためにプログラム(ソフトウェア)開発を検討する予定である.また研究計画における【研究2】「心身機能と身体活動・座位行動との関連の検証」については,これまでの解析をさらに進めて知見を体系的に整理した上で,【研究3】におけるモデル構築にその知見を活用する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
所属機関の事務処理の関係で当該年度の支出費目の一部が当該年度の支出額として計上されていなかったことや,「その他」として計上していた予算の執行が当初の想定よりも低く抑えられたことから次年度使用額が生じた.この後者の部分については,次年度分として請求した助成金の一部と合わせて,新規に検討している追跡調査データ取得・整理用のプログラム(ソフトウェア)開発の外部委託費に充てることを計画している.
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