研究課題
本研究では、①喫煙は虚血性心疾患患者に対し薬剤溶出製ステントを用いた経皮的冠動脈形成術(DES-PCI)後の胸部症状と関連し、血管内皮機能に悪影響を及ぼすかどうか、②DES-PCI後の継続的な禁煙支援・指導は、喫煙再開率を減らし狭心症症状を改善させ予後を改善させるかどうか、の2点を検証すること目的とした。DESによるPCI施行患者における、禁煙状況と狭心症状の調査および血管内皮機能(Ach負荷試験)、冠動脈内イメージング(OCT)を評価した。これまでに、合計胸痛精査のため冠動脈造影検査を行った計48例がスタディーにエントリーされた。有意狭窄があるも虚血を認めないためPCI施行に至らなかった症例が31例あり、これをコントロール(C)群とした。虚血を有する有意狭窄に対してPCIを施行した症例が17例であり、内訳はPCI時の現喫煙群が7例、喫煙既往群が10例であった。現喫煙群が少なく、その後の禁煙指導を2群(継続的禁煙指導と非継続禁煙指導)にランダム化することは困難であったため全7例に継続的禁煙指導を行ったが、禁煙群が3例、非禁煙群が4例となった。喫煙既往群10例は継続的に禁煙可能であった。6ヶ月フォローアップでは、喫煙既往群1例で再血行再建を行ったが、他イベントは認めなかった。PCI後胸部症状は全例で改善したが、非禁煙群1例では改善が乏しかった。また喫煙既往群1例で症状が残存していた。内皮機能評価では、Ach負荷による対照血管径変化率(%DC)を計測し比較した。開始時の喫煙群の%DCは-11%、喫煙既往群は-6.1%であったが、6ヶ月フォローアップ時には禁煙群で-3.1%と改善したが、喫煙既往群では-10.6%と軽度悪化した。OCTによる評価では禁煙により、2/3の症例でVasa Vasorumの増生が改善傾向を認めた。