研究課題/領域番号 |
17K09155
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
平林 公男 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (20222250)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ヒトスジシマカ / デング熱 / 標高分布 / 幼虫生息密度 / 休息場所 / 吸血飛来密度 / 吸血時間帯 / 内陸性気候帯 |
研究実績の概要 |
【成虫休息場所の予測と現地確認調査】①ヒトスジシマカ成虫吸血飛来数が多い地点で、近傍に幼虫髙密度生息地が無い箇所を昨年に引き続き抽出し、潜み場所の特徴をパターン化した。②昨年は新潟県内で調査を行ったが、本年は長野県内、数十箇所を選択し、昨年使用したものと同型の手製捕虫ゲージを用いて潜み場所を探索し、確認・評価を行った。成虫は、直射日光の当たらない環境、大きな葉の茂る植物や、植物が密に生い茂る環境、比較的吸血源に近い環境を好む傾向を抽出できた。【LEDランプ、制御装置の開発・改良】昨年度完成させた機器を用いて、検討を行った。【波長の異なるLEDランプを用いた誘引飛来個体数の検討】①波長の異なるLEDランプを用いた誘引飛来個体数の検討については、近紫外光、赤外光でも、顕著に多くの個体は捕獲されないことを確認し、波長の違いについては、成虫誘引にあまり大きな影響を与えていないことが示唆された。②LEDランプと他の誘引物質との組み合わせについては、CO2が最も効果的であり、トラップの色(コントラストの異なる黒色と白色)などの比較については、明確な結果が得られなかった。③ヒトスジシマカ成虫の走光性については、本年度、新たに偏光を利用して、その違いに注目し、検討を行った。カ類に比較的生物学的に近縁なユスリカ類を材料に、直線偏光と円偏光を用いて比較した。その結果、円偏光にはほとんど集まらず、直線偏光に多くの個体が集まる傾向が認められた。④本年のデータのとりまとめを行い、国内学会で4件の学会発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【成虫休息場所の予測と現地確認調査】については、2年間にわたる現地調査を通して、直射日光の当たらない環境、大きな葉の茂る植物や植物が密に生い茂る環境、比較的吸血源に近い環境を好む傾向を抽出できた。【LEDランプ、制御装置の開発・改良】装置は完成し、放射するエネルギー量も同等に調節できるメカニズムに設計したため、蚊のみならず、多くの衛生害虫、不快昆虫類にも調査・研究で応用できる装置が完成した。【波長の異なるLEDランプを用いた誘引飛来個体数の検討】2018年度は、春期、気温が例年になく急上昇し、ヒトスジシマカの発生が極めて早くから確認された。しかし、本来の発生最盛期である夏期(7月中旬から9月中旬)には、異常高温(大きな社会問題となった。)が続き、野外での成虫捕獲数が極めて低い異常な年となった。ヒトスジシマカ幼虫の発生源となる小水域が小雨と高温により、そのほとんどが消失し、そのために、成虫の羽化が低密度であったと推測できた。そのため、2018年度は、成虫の飛来数が例年と比較して激減し、LED光源への誘引評価が極めて難しかった。数少ないデータセットから、LED光源の波長の違いは、ヒトスジシマカ成虫の誘引要因としては、あまり大きな影響を与えていないことが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度はヒトスジシマカ成虫の走光性についての検討を進展させる。コントラストの違いが、成虫の誘引要因の一つとなる可能性がこれまでの野外実験から示唆されたため、今後の研究では、多くの昆虫類が走性に利用していることが知られている「偏光」に注目する。偏光は、「円偏光」と「直線偏光」の2つのパターンに大きく分類することができ、「直線偏光」は、さらにその向きから「水平偏光」と「垂直偏光」に分類することができる。市販の偏光フィルターを利用して、一定波長、一定光量に集まる偏光の違いを比較することにより、ヒトスジシマカ成虫の誘引行動パターンを検索する。2018年度に、ユスリカ類で野外実験を行った結果、走光性に違いが認められた条件で、2019年度は、ヒトスジシマカ成虫において、同様な傾向が認められるのか、実地調査を複数回行う予定である。さらに、2019年度は、最終年度にあたるため、これまで毎年行ってきたヒトスジシマカ成虫の発生モニタリング調査の結果をまとめ、環境要因(降水量や日平均気温など)と成虫飛来数との関係を解析し、発生予知に結びつけるための検討を行って行く。また、2018年の高温、小雨が、ヒトスジシマカ成虫の発生動向に与える影響についても、詳細に解析し、予防対策に結びつけていく。
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