癌遺伝子 RET の導入により良性腫瘍からメラノーマに多段階発癌するモデルマウスを用いて、悪性転化する際に発現量が変化する分子の網羅的解析を行なった。いくつかの分子で siRNA や薬剤で発現抑制することで、細胞増殖や浸潤など、発癌機構が抑制されることを観察した。 腫瘍局所の微小環境に於いて、免疫細胞である T 細胞による抗腫瘍免疫機構が働く。しかし、アミノ酸代謝酵素の一つである interleukin-4 induced gene 1(IL4I1) が骨髄細胞から放出されると、 T 細胞の腫瘍局所への集積が阻害され、抗腫瘍反応が減弱されることを観察した。IL4I1 の発現抑制により、腫瘍の免疫回避を阻害できる可能性が示唆された。また、腫瘍局所に浸潤したγδ T 細胞は、炎症性サイトカインにより一酸化窒素合成酵素 (NOS2) の産生誘導されることを観察した。NOS2 は骨髄系由来サプレッサー細胞 (MDSCs)の浸潤を誘導する。MDSCs は免疫細胞の抗腫瘍反応を抑制する。炎症性サイトカインを抑制することにより、γδ T 細胞からの NOS2 産生を減少させ、MDSCs の腫瘍局所への浸潤および腫瘍の免疫回避を抑制出来る可能性が示唆された。 非平衡大気圧プラズマ (NEAPPs) の抗腫瘍効果を良性腫瘍およびメラノーマを用いて検証を行った。NEAPPs の照射により、細胞増殖や浸潤に関連する分子の mRNA 発現が抑制された。NEAPPs は、メラノーマの治療だけでなく、巨大型先天性色素細胞母斑などの予防にも使用できる可能性が示唆された。 環境中の元素が生体に及ぼす影響を、アジア各国の飲料井戸水や工業廃水の元素分析の結果をもとに研究を行なった。不死化角化細胞やメラニン産生細胞を用いた細胞毒性実験より、いくつかの元素暴露に於いて、細胞に形質転換を誘発する可能性が示唆された。
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