研究実績の概要 |
造血幹細胞移植は難治性血液疾患の治療法の1つである。本研究では、造血幹細胞移植の予後に影響を与えるHLA遺伝子以外のドナー・レシピエントの遺伝子多型を同定して、移植におけるドナーの選択方法や移植の予後予測を向上させることを目的としている。具体的には、動物実験などによって造血幹細胞移植の予後との統計的有意な関連が報告されていて、かつヒトでの分子疫学的解析がそれほど報告されていない一塩基多型について、ヒトの骨髄移植予後との統計的有意な関連の有無について解析してきた。その際、HLAとの相互作用についても解析している。本年度は主にこれまでの年度の研究結果のさらなる論文化を目指した。しかしながら、研究代表者の異動先での業務負担がコロナ禍以降引き続き大きかったことや論文原稿の改善の必要性が生じたことなどから、結局さらなる論文の出版には至っていない。 研究期間全体としては(有意水準0.005とした場合に)3級以上急性GVHDと関連した遺伝子多型を1個、原疾患の再発と関連した遺伝子多型を1個同定している。また、癌化や癌抑制に重要と報告されていて造血幹細胞移植にも関係する可能性がある遺伝子の多型と骨髄移植予後が統計的有意な関連のないことを論文として2021年度に発表した(Takahashi et al., Analysis of Relationships between Immune Checkpoint and Methylase Gene Polymorphisms and Outcomes after Unrelated Bone Marrow Transplantation, Cancers, 13, 2752, 2021.)。今後は追加の論文が早期に出版されるように努める。
|