研究課題/領域番号 |
17K09159
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
田邉 剛 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (80260678)
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研究分担者 |
山口 奈津 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (40450671)
高橋 秀和 山口大学, 大学院医学系研究科, 講師 (90450402) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 非ウイルス性肝がん / バイオマーカー / microRNA / エクソソーム / ctDNA |
研究実績の概要 |
本研究では、非ウイルス性肝がんの新たなハイリスク群同定と早期診断システムの確立を目的としている。今年度も研究に使用する検体および臨床データの収集を進めながら、以下の解析を行った。 (1) 血中microRNA解析:非ウイルス性肝がんにおいて、特異的に変化するmicroRNAの同定と、異なる進行度の段階での量的変化を明らかにするために、stage I、stage II+III、および糖尿病の3群(N=9)のプール血清を解析した。最初に包括的な解析として、末梢血中に多くみられるmicroRNA175種類をリアルタイムPCRにより定量し、各群間を比較した。その結果、非ウイルス性肝がんと糖尿病群の間で発現量が2倍以上変化するmicroRNAが18種存在した。このうち12種類のmicroRNAについて、非ウイルス性肝がん(stage I~IV)、C型肝がん(stage I~IV)および糖尿病の計95名の個別血清を用いて、リアルタイムPCRにより測定した。 (2) 非ウイルス性肝がんで特異的に発現する血中循環腫瘍DNA(ctDNA)を同定することを目的として、血清エクソソームに内包されるctDNAの解析の準備を進めている。血清から分離したエクソソームを用いる利点は、死細胞由来のcell-freeDNAを除ける点、血清採取時に混入した外部DNAを除ける点、エクソソーム内のDNAはcell-free DNAに比較して血中で安定的に存在すると想定される点である。今年度は、研究協力者が開発した、エクソソームの物理化学的特性を保持した新たな調整法を参考に、細胞培養上清を用いたエクソソーム精製の条件検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プール血清を用いて、非ウイルス性肝がんで変化するmicroRNAについて12の候補を同定した。それぞれの候補のmicroRNAについて、個々の症例における変化を明らかにするために、個別血清を用いた測定を行った。現在、詳細なデータ解析を進め、肝がんにおける特異性と、進行度との関係の程度を明らかにしている。 また計画変更により新たな解析項目として、血中エクソソーム中のctDNA解析を追加した。従来用いられている血清中のctDNAと比較して、エクソソームに包埋されていることにより、ctDNAが安定性と特異性に優れているためである。 今年度は解析の準備を進めた。研究協力者が開発した、エクソソームの物理化学的特性を保持した新たな調整法はある程度の熟練が必要であり、現在さまざまな条件検討を進めることにより、安定した分離を行えるようになってきている。
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今後の研究の推進方策 |
非ウイルス性肝がんについて、同定したmicroRNAのバイオマーカーとしての有用性の検討を行う。 さらに新規エクソソーム分離法について、従来法との比較検討を行う。 血中microRNAについては、今年度同定した12種類を中心に解析を進める。 個別の症例における定性的、定量的な解析を進め、非ウイルス性肝がんにおける特異性と、ステージの進行度との関連を明らかにし、診断だけで無く予後を推定するバイオマーカーとしての有用性を明らかにする。 血中エクソソーム由来ctDNA解析を目的とした血清エクソソームの精製については、細胞培養上清を用いてエクソソームの物理化学的特性を保持した新たな調整法の条件検討を行った後、血清からの精製を進める。同時に従来汎用されてきた精製kitを用いた方法も平行して行い、両者を比較して新規の調整法の優位性を検討する。 自然免疫因子等の遺伝子多型解析は、必要な検体数が揃い次第解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画を一部変更し、今年度は血中エクソソーム由来ctDNA解析を行うことになったが、本年度は条件検討等の準備を行ったため、多数の検体を用いた解析は次年度に行うことになったためである。 また、自然免疫因子等の遺伝子多型解析については、検体が揃い次第解析を行うこととしために、次年度使用額が生じた。 次年度に持ち越した研究費をこれらの解析費用に充てる予定である。
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