研究課題/領域番号 |
17K09168
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研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
大西 志保 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 助教 (80511914)
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研究分担者 |
馬 寧 鈴鹿医療科学大学, 医療科学研究科, 教授 (30263015)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | がん化学予防 / 炎症 / アスピリン / DNA損傷 / 8-ニトログアニン / がん幹細胞 |
研究実績の概要 |
炎症は重要な発がん要因の1つである。昨年度は寄生虫感染による慢性炎症を介した膀胱癌患者の標本を用いて解析し、炎症関連DNA損傷の8-ニトログアニンが病変組織に蓄積する機序やがん幹細胞生成に関する知見を得た。一方、感染がなくてもがん部では一般に炎症をともなうことから、炎症はがん悪性化にも寄与すると考えられる。本年度は、がん悪性化における炎症関連因子の役割を明らかにするため、寄生虫によらない膀胱がん患者を解析した。市販組織アレイを用いて、DNA損傷や幹細胞マーカーなどを免疫組織化学的に解析した結果、膀胱がん組織では正常組織に比べて、がん幹細胞マーカーCD44v9や8-ニトログアニンが強く観察される傾向にあった。炎症関連因子HMGB1は、膀胱正常上皮組織では細胞核内で強い染色性が観察されたが、膀胱がんの病期が高いグループで有意に細胞核から細胞質へ局在が移行することが観察された。HMGB1は細胞死にともなって放出されると炎症性応答を引き起こすことから、がんによる炎症がさらにDNA損傷を起こし、悪性化につながる可能性が示唆された。 免疫正常マウスに、発がん化学物質を投与し、炎症誘発剤のデキストラン硫酸ナトリウムを1週間飲ませることにより大腸炎を誘発させ、大腸がんを発症させた。この発がんモデルマウスにおいて、がん発症前から抗炎症薬のアスピリンを継続して飲ませた群では、アスピリンの代わりに水を飲ませた群と比較して、大腸に生じた腫瘍数が少ない傾向が観察された。アスピリン投与によるがん抑制効果の可能性が示唆された。 (注記 有馬寧、馬寧、Ma Ningは同一人物。)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H30年度は、予定どおり炎症関連がんの患者試料について組織化学的解析を行った。また市販の組織アレイと合わせて解析した結果、興味深い知見が得られので、学会発表した。 さらに、予定していた発がんモデルマウスを用いた実験を行い、アスピリン投与によるがん抑制効果が期待どおり観察された。おおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
発がんモデルマウスを用いた実験では大変興味深い事象が観察されているが、統計学的有意差が得られていないので、匹数を増やして引き続き実験中である。また、採取した組織および血液試料を用いて、分子機序の解析を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月に試薬類を購入する際、残額不足で取り消したため、差額が生じた。繰越し金とH31年度の予算を合算して、4月初めにさっそく購入した。
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