研究課題
炎症は重要な発がん要因の1つである。本年度は、発がんモデルマウスを用いた実験を主として行い、アスピリン投与によるがん抑制効果と分子機序の解析を行った。ICRマウスを、無処理群、アスピリン投与群、発がん+水投与群、発がん+アスピリン投与群、の4群に分けた。発がんマウスには、発がん化学物質のアゾキシメタンを腹腔内投与した後、炎症誘発剤のデキストラン硫酸ナトリウムを1週間飲ませることにより大腸炎を誘発させ、大腸がんを発症させた。アスピリン投与マウスには、経口ゾンデを用いてアスピリン水溶液を12週間投与した。同様に、水投与群のマウスにはアスピリン水溶液の代わりに蒸留水を投与した。その結果、発がん+アスピリン投与群では、発がん群+水投与群に比べて、大腸に生じた腫瘍数が統計学的有意差をもって減少した。アスピリン投与群のマウスは、無処理群と比べて体重増加に差異なく、健康状態に異常は観察されなかった。大腸組織を採取して標本を作製し、ヘマトキシリン・エオジン染色により観察した結果、発がん+アスピリン投与群では、発がん群+水投与群に比べて、癌化の減少が確認できた。また、免疫組織化学的に解析した結果、がん部位では8-ニトログアニンが観察され、炎症によるDNA損傷の関与が示唆された。アスピリンの抗炎症機序に関わるシクロオキシゲナーゼCOX2と誘導型一酸化窒素 (NO) 合成酵素が、アスピリン投与により腫瘍部位で減少することが確認された。そのほかアスピリン投与による各種マーカーの変動が確認され、興味深い知見を得ている。(論文投稿中)
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Cancer Science
巻: - ページ: -
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Oxidative Medicine and Cellular Longevity
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Adv Exp Med Biol.
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