研究課題
珪肺症患者では、呼吸器病変に加え、高頻度で自己免疫疾患を発症することが知られている。珪肺症例全員が自己免疫疾患を併発するわけではなく、その全容は明らかではない。近年、細菌やウィルス感染が自己免疫疾患発症と関わっていることが報告されていることから、珪酸とToll Like Receptor (TLR)リガンドの混合培養により引き起こされる免疫動態を検討する。本課題では、珪肺症におけるTLR刺激下での免疫動態の変遷過程を明らかにすることで、多様な「自己免疫疾患」発症、自己寛容破綻のメカニズムの解明を目的としている。これまでの研究から、珪酸添加のもと樹状細胞とCD4+ T細胞の混合培養では、添加されるTLRリガンドに応じてサイトカイン発現パターンがあることをみいだした(2018年度報告書参照)。この結果は、珪酸曝露下で異なるTLR刺激が入ると、その応答も変わることを示しており、感染の原因によっては珪肺症における自己免疫疾患発症へのきっかけになりうるという本研究の仮定を裏付けるものと考えた。そこで、2019年度には、珪酸曝露下でTLR刺激がThバランスに与える影響調べた。その結果、大変興味深い結果が得られた。TLR1/2とTLR4リガンドは珪酸曝露によりTh1を増やし、TLR2リガンドはTh1およびTh17を、TLR3およびTLR7/8リガンドはTh1を大幅に減少させた。この結果は、珪肺症例において、ある種の感染や異物の侵入がある場合、免疫に関わる細胞が健常例とは違った動態をとることを示している。このことは、珪肺症例で自己免疫疾患に傾向する一つの原因に感染症などがあると考えた本研究の仮説を裏打ちする結果だと考える。
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International Journal of Molecular Sciences
巻: 20 ページ: 2581~2581
doi: 10.3390/ijms20102581
労働衛生工学
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