研究実績の概要 |
【目的】昨年度までの研究では樹脂(プラスチック)原料であるビスフェノールAジグリシジルエーテル(BADGE)、無水トリメリット酸(TA)等の特異的IgG抗体値と小児の食物特異的抗体の関係に着目した研究を行った。化学物質曝露によって化学物質抗体が産生される。本年は小児の食物特異的抗体と関係の認められたBADGEとBADGE水解後のBADGE水和物(BAGDE・H2O, BAGDE・2H2O)の生体試料中濃度測定方法を創出し、生体試料中の化学物質濃度、化学物質抗体値、アレルギーとの関係を明らかにすることを目的として研究を行うこととした。 【対象と方法】乳幼児6名を対象に生後1か月と7か月の血清を用いて、HPLC-MS/MSを用いてBADGE、BAGDE水和物の濃度を測定した。 【結果】BAGDE、BAGDE・2H2Oは検出されなかった。対象者1~6の1か月時点でのBADGE・H2Oの結果は36.8, 11.0, 25.6, 158.6, 32.3, 2.3ng/ml 、7か月時点でのBADGE・H2Oの結果は122.9, 7.0, 2.5, 2.6, 3.8, 1.5 ng/mlであった。 【考察】BADGE・H2Oの濃度は個々人で異なっており、抗体産生やアレルギー発症の時期を考慮して濃度測定時期を検討する必要がある。本年は新型コロナ流行により、研究機関への訪問禁止、試薬の欠品などで研究が年度途中でストップしてしまった。目的を達成するためには、引き続き化学物質濃度の測定を行い、研究を続行する必要がある。 【結論】HPLC-MS/MSを用いて乳幼児のBADGE関連物質測定方法を確立することができた。引き続き検体数を増やし、生体試料中の化学物質濃度、化学物質抗体値、アレルギーとの関係を明らかにする必要がある。
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