| 研究課題/領域番号 |
17K09176
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| 研究機関 | 産業医科大学 |
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研究代表者 |
保利 一 産業医科大学, 産業保健学部, 教授 (70140902)
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| 研究分担者 |
樋上 光雄 産業医科大学, 産業保健学部, 助教 (40588521)
石田尾 徹 産業医科大学, 産業保健学部, 講師 (90212901)
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| 研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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| キーワード | 光触媒 / 吸着剤 / 有機溶剤 / 空気清浄装置 / 溶射 / 破過時間 / 酸化チタン |
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| 研究実績の概要 |
二酸化チタン光触媒を溶射した吸着材を用いて、親水性の有機溶剤であるメタノールおよび疎水性の有機溶剤であるトルエンの吸着および分解特性を調査した。実験には、疎水性の吸着材である活性炭と親水性の吸着材であるセピオライトの粉末を混合(7：3)し、ペレット状に焼成し、これに光触媒(TiO2)を直接溶射したものを用いた。所定濃度に調整した有機溶剤を含む空気を吸着材充填セルに導入し、セル通過後の蒸気濃度を経時的に測定し、破過曲線を求めた。LEDにより紫外光を照射して行ったものを明条件、照射せず暗幕で覆って行ったものを暗条件とした。
その結果、メタノールの場合、破過後の出口濃度が一定になったときの値を両条件で比較すると、明条件の方が約100 ppm低かった。これは、明条件では紫外光を照射したことにより、光触媒が働き、メタノールの分解が進んだためと考えられる。暗条件でも出口濃度が入口濃度より低くなったが、この原因は不明であり、実験条件を含め、さらなる検討が必要である。トルエンの場合、明条件・暗条件ともに出口濃度が一定になったときの値は入口濃度とほとんど変わらなかったことから、光触媒によるトルエンの分解は進んでいないと考えられる。また、明条件下で流量の条件だけを変えたときのメタノールの破過曲線を比較すると、出口濃度が一定になったときの値に差はなかった。このことから、トルエンについては，分解率への流量の影響はないか，きわめて小さいことが推測された。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初，平成29年度は，前年度まで使用していた既存の装置を改良し，親水性の吸着材であるシリカゲルに光触媒を溶射したものを用いてメタノールの分解・吸着特性を調べる予定であったが，疎水性吸着材の活性炭と親水性吸着材のセピオライトを混合した両親媒性吸着材のペレットに光触媒を溶射することに成功したため，方針を転換し，両親媒性吸着材を用いて，親水性のメタノールと親油性のトルエンに対する吸着・分解特性を調べることとした．ただし，それには装置を改良する必要が生じたため，装置自体を新しく製作した．
平成29年度に製作した吸着・分解試験部は，光照射により発熱するため二重管とし，内側に光触媒溶射吸着剤を，外側に冷却用空気を通せるようにした．装置の製作に時間を要したため，実験の開始に遅れが生じたが，両親媒性の吸着材を用いたため，平成29年度の実験として当初予定していたメタノールだけではなく，次年度以降に計画していたトルエンについても実験を行うこととした．ただし，実験開始が遅れたこともあり，光触媒溶射シリカゲルについては本年度は使用しなかった．また，年度末に近くなって，テスト部に用いたガラス管にひびが入ったため，実験をいったん中止した．平成29年度の実験では，組み立てが容易なように，吸着・分解部は一体となった二重管を用いたが，ひびが入ると使用不可能になるなど，メンテナンスが難しいことがわかった．このため，平成30年度は，内管と外管を独立した管とし，メンテナンスが容易になるように改良する予定である．
また，湿度の影響についても実施する予定であったが，平成29年度は乾燥空気のみの実験しかできなかった．以上のことから，トルエンを使用した実験については，前倒しで進んでいるが，全体としては遅れ気味である．
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| 今後の研究の推進方策 |
吸着・分解部を独立した二重管にした装置を試作し，これを用いて吸着・分解実験を行う．昨年度まではエバポレーターに用いる二重ガラス管を使用していたが，通常のガラス管は光触媒が反応する紫外光領域の光を吸収する性質があることが分かったため，材料を紫外光の吸収が少ない石英ガラス管に変更する．
平成29年度の実験で，メタノールについては，ある程度光触媒の効果が観察されたが，トルエンについては光触媒による分解がきわめてちいさかった．この原因としては，今回用いた光触媒が，トルエンのようなベンゼン環を持った物質の分解が遅い可能性や，今回用いた両親媒性吸着剤が黒色であり，光を通しにくかったため，光が当たる外表面以外では分解が起こらなかった可能性などが考えられる．また，過去の本研究室での研究で，トルエンの光触媒による分解速度は，濃度に依存し，濃度が高いほど遅かったことから，今回の実験条件が濃度が高く，分解の効果が見えなかったことも考えられる．さらに，昨年度の結果では顕著ではなかったが，一昨年度行ったメタノールに対する光触媒溶射シリカゲルの分解特性を調べた結果では，流量が大きいと分解は小さかったが，流量を小さくすると，分解により，最終的に出口の蒸気濃度が，入口濃度よりも低くなることも観察されている．
以上のことを勘案し，平成30年度は，光触媒を溶射した，両親媒性吸着剤およびシリカゲルを用い，光の強度，濃度，流量等のパラメータを変えて吸着，分解特性に与える影響について調べる．また，平成29年度は乾燥空気を用いて実験を行ったが，相対湿度も吸着・分解特性に影響を与えることが考えられるので，湿度を低湿度，中湿度，高湿度と変えて，吸着・分解特性に与える影響を調べる．
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| 次年度使用額が生じた理由 |
実験装置を新規に製作したため，これに時間がかかったこと，また，年度末に近くなって装置にひびが入るなどの不具合が生じたが，時間切れで改修ができなかったため，研究が予定よりもやや遅れ，使用額に差がでている．平成30年度には，昨年度遅れた分を含め，研究を進める予定である．
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