研究課題/領域番号 |
17K09178
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
石田尾 徹 産業医科大学, 産業保健学部, 講師 (90212901)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 混合有機溶剤 / 気液平衡関係 / 平衡蒸気濃度 / リスク管理 / 非理想溶液 / ラウール則 / UNIFAC式 / CHEMCAD |
研究実績の概要 |
本研究では,リスクアセスメントが義務化された663(申請時640)物質を対象に,UNIFACモデルの適用の可能性を検討することを目的とした.平成29年度はまず,リスクアセスメントの実施が義務化されている663物質のうち,常温常圧で液体とされる物質を有機溶剤該当物質として抽出した.次に,それぞれの物質に含まれるUNIFACモデルのグループをすべて抽出した.その際,CHEMCAD(ケムキャド)内の計算システムを使用し,グループ種やグループ間相互作用パラメータの有無を確認した.最後に, 第一種有機溶剤2種,第二種有機溶剤37種,特別有機溶剤12種の計49種を対象に,CHEMCADを用いて気液平衡関係を推算した.その結果,663物質のうち,有機溶剤に該当する物質は246物質あり,その物質は39のUNIFACグループで構成されていた.また,必要となる741対のパラメータのうち,現在存在しているパラメータは413対であった.このパラメータの存在比から,2成分系混合有機溶剤の気液平衡関係の計算においては,約半分程度の系で計算可能であることが示唆された.一方,有機則と特化則の49物質に関しては,18のUNIFACグループで構成されていた.この18グループにおいて必要となる全ての組み合わせのうち,未決定のパラメータは13対存在した.次に,重量分率5%の液相濃度に対するUNIFACモデルの気相濃度の計算値が,ラウール則から乖離する系を調査した.その結果,差異が10%未満の系は661系,10%以上50%未満の系は238系,50%以上の系は252系存在した.また,特定の濃度に限らず,ラウール則とUNIFACモデルの計算値の乖離が一番大きい点を調べたところ,液相重量分率5%の濃度に着目した時と比較して,個々の飽和蒸気圧からのみでは精度よく蒸気濃度を予測できない系が111系増加した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では,安衛法の有機溶剤49種(特化則12種および有機則の37種)とリスクアセスメントの実施が義務化された640種(現663)の全ての2成分系の組み合わせを対象に, CHEMCADを活用して気液平衡関係を計算し,ラウール則から大きく乖離する系を調査することを目的とした.計画の初年度は,目的前半の有機溶剤49種の全ての2成分系の組み合わせ1176系に対して,CHEMCAD内のUNIFACモデルを用いて気液平衡関係を計算し,ラウール則(理想溶液)との差異を調査することとしていた.しかし,計算システムの性能が良く予想以上に研究が進み,最終年度に予定していた目的の後半の663種の化学物質について,有機溶剤の抽出や,UNIFACグループの分類・解析等を同時進行で行った.
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今後の研究の推進方策 |
活量係数式であるUNIFACモデルはグループ寄与法(化学物質は多数存在するが,その構造は僅か50個の置換基等の構成グループで成り立つという考え)を用いているため,異性体の違いを表現できない.そこで,異性体を含む一部の混合系について(例えば,トルエン+1-ブタノール系とトルエン+2-ブタノール系の比較など),温度25℃,大気圧下で,気液平衡関係を測定する.次に,異性体により気液平衡関係に差異があれば考察する.また,663種の化学物質の全ての組み合わせ204480通り(実際には溶剤以外は除くので組み合わせの数はかなり少ないと考えられる)の混合有機溶剤系を対象に,前年度と同様の方法で計算と比較を行い,結果を随時可視化する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は計画通りの購入等であったが,計算システム(ライセンス含む)とそれを装備するパソコンが当初見積もりより安かったため,平成30年度に購入予定だったパソコンを急遽同時に購入した.平成29年度の残額については,平成30年度にガスクロマトグラフィを用いた実験を計画しているため,その消耗品等を購入する予定である.
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