研究課題/領域番号 |
17K09178
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
石田尾 徹 産業医科大学, 産業保健学部, 講師 (90212901)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 混合有機溶剤 / 気液平衡関係 / 平衡蒸気濃度 / リスク管理 / 非理想溶液 / ラウール則 / UNIFAC式 / CHEMCAD |
研究実績の概要 |
本研究では,リスクアセスメントが義務化された物質を対象に,UNIFACモデルの適用の可能性を検討することを最終目標とした.昨年度は,第1種有機溶剤2種,第2種有機溶剤37種,特別有機溶剤12種の計49種を対象に,CHEMCADを用いて気液平衡関係を推算した.全ての組み合わせ1176系をの計算を行ったが,かなりの時間と労力を要することがわかった.そこで平成30年度は,まず,CHEMCADとエクセルのマクロを利用し,多数の混合有機溶剤の気液平衡関係を迅速に計算可能なプログラムの開発を目的とした.ただし,手作業で行う操作をそのままマクロ化してCHEMCADを実行することは不可能であったため,CHEMCAD内のフラッシュインターフェースを利用して連続的に計算することを試みた.このインターフェースでは,タンク(蒸留装置)に所定の混合比の2成分系混合有機溶剤を供給し,平衡状態での液相モル分率に対する気相モル分率をUNIFAC式で求めた.次に,供給する混合比を変化させ,異なる液相モル分率に対する気相モル分率を求めた.これを繰り返し計算することで,一つの2成分系混合有機溶剤の気液平衡関係の計算を完成させた.あらかじめ原料倉庫に有機溶剤該当物質をリスト化し,その中から2物質を取り出して供給するように工夫した.さらに,エクセルに取り込んだデータから,2成分系の気液平衡関係のグラフを自動で作成するマクロを別に作成した. 次に,作業現場で汎用されている代表的な有機溶剤で異性体が存在するキシレンまたは,酢酸ブチルを含む2成分系の混合有機溶剤の気液平衡関係を実験的に求め,UNIFAC式を用いて得られた計算値と比較検討した.その結果,UNIFAC式による計算値はラウール則より実験値と近い値となったが,計算値と実験値にずれが見られた.これはUNIFAC式が物質ごとのパラメータではなくグループパラメータを使用しているためと考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画の初年度に,目的前半の有機溶剤49種の全ての2成分系の組み合わせ1176系に対して,CHEMCAD内のUNIFACモデルを用いて気液平衡関係を計算し,ラウール則(理想溶液)との差異を調査することとしていた.計算は完了したが,この計算にはかなりの時間と労力を要することがわかった.そこで,エクセルのマクロを利用し,CHEMCADと連結することにより,計算とグラフ化を自動で作成可能なプログラムの開発に着手した.このシステムが完成すれば,当初の目標であるリスクアセスメントが義務化された673物質を対象に,2成分系混合有機溶剤の気液平衡関係を迅速に計算することが可能になると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
CHEMCADとエクセルのマクロを連結し,多数の混合有機溶剤の気液平衡関係を迅速に計算可能なプログラムの開発に着手した.現在のプログラムでは,原料倉庫に有機溶剤該当物質をリスト化し,その中から2物質を取り出して供給するように工夫した.その際,最後に入力した最下位の物質が第1成分として固定され,その第1成分と他の物質との気液平衡関係が計算される.そのため,例えば10物質を原料倉庫にリスト化すれば,9系の気液平衡関係が計算される.この固定する第1成分を順に他の物質に変更すれば,最終的には全ての組み合わせの計算が可能と思われる.最終年度は,上述した内容を含むプログラムの開発を行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度は実験を行うための設備(自動ガスサンプラー)を購入した.昨年度の残高と合わせて購入計画を立てていたが,当初見積もりより自動ガスサンプラーが安かったため,来年度に繰り越すことにした.来年度も引き続き,実験を行う予定であるので,その消耗品等を購入する予定である.
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