リスクアセスメントが義務化された有機溶剤を対象にUNIFACモデルの適用の可能性を検討した。その際、CHEMCADとエクセルのマクロを利用し、多数の混合有機溶剤の気液平衡関係を迅速に計算可能なプログラムを開発した。計算は、CHEMCAD内のフラッシュインターフェースを利用して連続的に行った。あらかじめ原料倉庫に溶剤をリスト化し、その中から2物質を取り出して供給した。次に、タンクに所定混合比の2成分系混合有機溶剤を供給し、平衡状態での気相モル分率をUNIFAC式で求めた。同時に、エクセルに取り込んだデータから、気液平衡関係のグラフを自動で作成するマクロを作成した。さらに、安衛法の有機溶剤における全ての組み合わせ1176系の計算を行い、ラウール則とUNIFAC式における気相モル分率の差異を求めた。ラウール則とUNIFAC式での計算値が最も乖離する濃度の2つに着目し、差異を算出した。その差異をそれぞれ10%未満,10%以上50%未満、50%以上の3つに分類し表上に可視化した。全ての組み合わせの計算では、約2時間要することがわかった。また、UNIFACモデルの計算では、グループ間相互作用パラメータが必ず必要であるが、CHEMCADを用いた計算では、パラメータが存在しない場合であっても計算が実行されてしまうことが確認された。結果としては、差異が10%未満は115系、10%以上50%未満は65系、50%以上は52系存在した。すなわち、個々の飽和蒸気圧からのみでは蒸気濃度を予測できない系が全体の約半数である117系(差異10%以上)存在することがわかった。本研究で開発した計算システムを用いれば、混合有機溶剤の気液平衡関係の非理想性を迅速に計算でき、容易に視覚化できることが確認された。また、今後新たな化学物質が追加された場合、その化学物質との非理想性を迅速に計算可能であることが示唆された。
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