研究課題/領域番号 |
17K09182
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研究機関 | 国立保健医療科学院 |
研究代表者 |
稲葉 洋平 国立保健医療科学院, 生活環境研究部, 主任研究官 (80446583)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 加熱式たばこ / 有害化学物質 / バイオマーカー / ニコチン / たばこ特異的ニトロソアミン / 多環芳香族炭化水素 |
研究実績の概要 |
IQOSの構造は、ロール状に加工されたたばこ葉を携帯型の装置によって350℃で加熱し、ニコチンなどの化学物質を吸煙する製品である。今年度は、加熱式たばこIQOSのニコチン、たばこ特異的ニトロソアミン(TSNA)、多環芳香族炭化水素(PAH)の分析法の開発を行った。特に、主流煙の発がん性物質であるベンゾ[a]ピレンをはじめとするPAHsの23成分分析では、ガス成分をインピンジャー、粒子成分をガラス繊維フィルターで捕集することで、2環のナフタレンから6環のベンゾ[ghi]ペリレンまで検出・定量が可能となった。このようにIQOSは紙巻たばこの燃焼温度(500-900℃)より低い温度でたばこ葉を加熱するため、たばこ煙の捕集、前処理法の開発が必要であった。その結果、主流煙のニコチン量は紙巻たばこと同等であった。たばこ主流煙の捕集には、ISO法とヒトの喫煙行動に近いHCI法の2種類を採用し、捕集した。今回のニコチン量の結果は、HCI法では1 mgを超えていた。次に、たばこ葉由来の発がん性物質のTSNAは紙巻たばこより低減されていた。燃焼で発生するPAHも加熱温度が300℃付近では発生量が紙巻たばこより低い結果となった。一方でPAHsの成分数は、紙巻たばこと変わらない結果となった。また、フェノール類、芳香族アミン類についても開発を進めている。 一方で、バイオマーカーの分析は揮発性有機化合物の代謝物17成分について分析法の開発を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
IQOSの分析法の開発については、順調に進んでいる。 一方で、バイオマーカーの分析法開発については、遅れが生じている。揮発性有機化合物の代謝物質のLC/MS/MSによる分析感度が、過去の先行研究結果より低減していた。分析条件の再設定、LC/MS/MSの再整備を行ったところ解消されたが、これにより研究に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
遅れているバイオマーカー分析法の開発を進める 同時並行して、昨年度開発・分析した加熱式たばこ主流煙の有害成分量から、喫煙者・受動喫煙者のバイオマーカーの倫理計画書を作成し、倫理委員会へ申請を行う。承認後、速やかに協力者の同意を得て尿試料を回収し、バイオマーカーの分析を実施する。 また、加熱式たばこのフェノール類の分析、芳香族アミン類に関しては分析法の開発を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
バイオマーカー分析の遅れが生じたために物品費が使用されていないことが大きい。次年度は、バイオマーカー分析法の開発について、力を入れて研究を推進する。使用項目としては、対象物質の標準溶液、分析カラムの購入に重点的に配備する。
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