最終年度は、研究計画に沿ってIQOSの加熱式たばこ主流煙のフェノール類と芳香族アミン類の分析法の分析を行った。フェノール類は、複数銘柄について分析したところグアイアコールが検出される銘柄が存在した。IQOSの芳香族アミンに関しては、o-トルイジン、4-アミノビフェニルが定量された。加熱式たばこのフェノール類、芳香族アミン類は燃焼に由来して発生する成分も多いため、300℃付近で喫煙する加熱式たばこでは、発生量が少なかった。一方で、複数成分が含まれているのも事実であることを考えると、長期的な健康影響を懸念している。次に、IQOSの互換機が市場に投入されており、その中には加熱温度がIQOSよりも高く設定されている加熱装置も報告されている。この製品についてIQOS主流煙を分析したところ、ある互換機では一酸化炭素量が20 mg/stick、ベンゾ[a]ピレン量が4.3 ng/stickと紙巻たばこに近い濃度となった。以上の結果から、IQOS互換機は製品によっては高濃度に有害化学物質を発生する製品も存在することが確認された。 IQOS喫煙者と紙巻たばこ喫煙者の尿中代謝物の分析を行ったところ、ニコチン代謝物(コチニン、3-ハイドロキシコチニン)の分析値は、大きな差が認められなかった。これは、主流煙の分析値と同じ傾向であった。発がん性物質であるたばこ特異的ニトロソアミンの代謝物量(NNAL)に関しては、紙巻たばこ喫煙者がIQOS喫煙者よりも高い傾向であった。しかし、IQOS喫煙者のNNALも定量下限値まで低下はしていなかった。次に揮発性有機化合物の代謝物(3成分)濃度では、紙巻たばこ喫煙者と加熱式たばこ喫煙者との間に差が認められた。
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