研究課題/領域番号 |
17K09183
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
石原 朋子 国立感染症研究所, 細菌第一部, 主任研究官 (30450555)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 薬剤耐性 / ESBL産生菌 / 腸管出血性大腸菌 |
研究実績の概要 |
現在、基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌の流行に伴う多剤耐性化やニューデリーメタロ-β-ラクタマーゼ1(NDM-1)産生菌の出現などの問題が国際的に深刻化している。プラスミド上に存在するESBL/NDM-1産生遺伝子は、食中毒起因細菌である下痢原性大腸菌の間で伝播・拡散していく危険性を持つ。本研究では、全国的な規模におけるESBL産生腸管出血性大腸菌EHECの分布・拡散状況ならびに細菌学的特徴の実態把握と耐性機構の詳細な解析を行い、薬剤耐性病原性大腸菌について、今後の方針ならびに対策の基盤となる科学的データを提示することを目的とする。 我々は、これまでに一般社会におけるEHECの健康保菌者の割合を明らかにするため、健常者47万人以上を調べ、EHEC保菌者(398名)の発生は10万人あたり約84.2人であることを示した。本研究では、これら健康保菌者由来EHEC 398株中において2株のESBL産生EHECが確認された。当該株の細菌学的特徴(血清型、ベロ毒素型、保有する病原因子の種類等)およびESBL型を調べた結果、CTX-M8 groupに属するEHEC O25 VT2株、CTX-M2 groupに属するEHEC O15 VT2株であることが明らかとなった。全ゲノム解析により、実験的に得られた細菌学的特徴ならびにESBL型について、遺伝学的な検証を行い、裏付けとなるデータを得ることができた。これらの知見は、健康保菌者由来EHECにおける国内におけるESBL産生EHECの拡散状況ならびにその細菌学的特徴の実態を明らかにするための科学的基盤の構築に寄与することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の計画を進めるにあたり、予期しない国内外における新型コロナウイルス感染症の流行を伴い研究計画に遅延が生じた。現在、当該ESBL産生株2株(CTX-M8 groupに属するEHEC O25 VT2株、CTX-M2 groupに属するEHEC O15 VT2株)について、取得した全ゲノム配列を利用したin silico解析および系統解析が終了し、当初計画していたESBL産生遺伝子の伝播・拡散メカニズムへの関連性を解析中である。 上記の現状を考え合わせて、本研究は遅れていると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
全国的な規模におけるESBL産生下痢原性大腸菌の拡散状況や細菌学的特徴を把握するための科学的データが十分でないことから、一般社会(健常者)におけるESBL産生EHECの分布・拡散状況ならびにその細菌学的特徴と耐性機構について把握するための科学的根拠を提示することが必要である。これまでの研究で健康保菌者より分離したEHECにおいてESBL産生株が確認されたことから、当該株について全ゲノム配列を利用した耐性機構の解析を進める。また、特定の血清型のEHECについて、長期的に収集された菌株における薬剤耐性遺伝子の保有についてゲノム解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)国内外における新型コロナウイルス感染症の流行により、研究の中断および遅延を余儀なくされたため、当初の予定よりも研究計画の実施が遅延し、未使用額が生じた。 (使用計画)引き続き解析等を継続するとともに、今後の研究の推進方策に従い引き続き適切に予算を執行していく予定である。
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