研究実績の概要 |
近年、胚盤胞移植(BT)法を用い、妊娠率の向上が報告されている。一方で、BT後は男児の出生の比率が高く、また、一卵性双胎(MZT)の発生も増加しているという報告もある。本研究では、BTと性比、MZTの関係について交絡因子により補正し、多変量解析により正確に評価した。解析には、エコチル調査(子どもの健康と環境に関する全国調査)の全固定データ(103,099の妊娠)を使用した。ART群(BT群2,020名、ET(分割胚)群728名)、非ART群(人工授精や排卵誘発剤のみの不妊治療)(3,546名)、自然妊娠群(92,022名)のデータを抽出し、性比とMZTの頻度の比較を統計学的解析を行った。各グループ(自然、非ART、ET、BT)における男児の率(%)は、それぞれ51.3, 50.7, 48.9 , 53.4%で、性比に偏りがみられ、BTでは男児が有意に高い結果だった(SSR: AOR 1.095, 95% CI1.001-1.198)。また、一卵性双胎の頻度(%)は0.27, 0.11, 0.27, 0.99%で、BTで有意に発生率が高いことが判明した(MZT: AOR 4.229, 95% CI 2.614-6.684)。BTにより男児の比率が高くなった理由として、男児胚の方が胚盤胞に到達するまでのスピードが速く、BTに優先的に選択されている可能性、または胚盤胞までの長期培養が男児胚に優位に働いている可能性が示唆された。また、MZTの発生頻度増加については、胚盤胞までの長期培養による環境ストレスにより細胞接着の低下が起こることが一つの要因と推測した。
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