近年、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)をはじめとする精神神経発達障害の有病率の増加が社会的問題となっており、これには近年増加の一途を辿っている高齢出産や、それに伴う体外受精や顕微授精といった生殖補助医療(ART)の増加など、受精-妊娠に関わる環境の変化が、その候補に挙げられる。また、ART治療では新鮮胚を用いるのではなく、凍結胚移植(FET)が主流となっている。その結果、子宮内環境は改善され、質の高い胚を移植することで、妊娠率の向上に寄与している。しかし、出生体重は自然妊娠より大きく、一部の周産期合併症の頻度も高くなっていることが知られている。最終年度は、不妊治療FET法により妊娠し、満期に出産した児の胎盤組織と自然妊娠後の胎盤組織より、高濃度に純化した細胞性栄養膜(CT)細胞を精製し、低分子RNA(miRNA)の発現について比較解析を行った。また、特にASDやADHDに関与する遺伝子について、その関連性を評価した。新鮮胚と凍結胚の満期(39-40週)の胎盤のmiRNAの発現を網羅的に比較し、その表現型との関連性について検討した。さらに、精神発達と密接な関係を示すmiRNAを抽出したところ、miR-134-5P、miR-30d-5PにFET由来胎盤で有意な変異を認めた。今後、これらのエピゲノムの変化について、その影響が児にどのような影響をもたらすのか長期的なFollowが必要と考える。
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