研究課題/領域番号 |
17K09196
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
豊川 智之 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 准教授 (40345046)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 複雑系シミュレーション / システムダイナミクス / ネットワーク分析 / 健康医療政策学 / Agent based modeling |
研究実績の概要 |
複雑系シミュレーションの一つである、システムダイナミクスを用いて要因間のネットワークを構築し、医療政策的介入効果について評価するシミュレーションを、入院高齢者の転倒対策数の増加をテーマに構築し、国際学会で発表した。 院内における高齢者の転倒は、骨折だけでなく、廃用性症候群や死亡のリスクを高めるヘルスサービスリサーチ上重要な指標となる傷病の一つである。対策は多岐に渡り、その対策数は増加の一途をたどっている。他方、転倒対策数の増加は、患者の行動抑制を伴うため、患者の不活動により廃用性症候群のリスクを高めている側面を有する。対策数の増加による転倒予防効果は逓減的に推移するため、デメリットの増加はメリットを打ち消すことが危惧される。この予防対策の増加と、転倒及び廃用性症候群発症との関連(バランス)について検証するシミュレーションモデルをシステムダイナミクスに基づいて作成した。 [方法]脳神経外科20病床の入院中の高齢者を想定した24ヶ月の期間でのシミュレーションを行った。転倒対策による転倒および廃用性症候群に関する予防的ループ、転倒対策による移動制限・不活動による廃用性症候群を増加させる増悪的ループを設けた。対策数から期待される予防効果と実際に観察された転倒状況との乖離を評価する比を設定し、その転倒期待比に応じて予防対策数を増加させる感度が鋭敏なケース(1.125)と寛容なケース(1.8)を比較した。転倒の対策と転倒予防効果についてはX病院(公立病院700床)における転倒データセットより求めた経験的リスク比を用い、予防効果の大きい順に対策が講じられるものと仮定をおいた。廃用性症候群の初期値を1として、増分の比較を行った。 [結果]期待転倒数と観察転倒数の差に対して鋭敏と寛容のケースでの比較した結果、鋭敏な場合は廃用性症候群発生数が0.458人増、寛容な場合は.070人増と差が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
米国 Santafe Institute での研修受講が技術的課題の解消のためのボトルネックとなっているが、採択されなかった。現在、配布されているソフトウェアにもバグがみつかっている。シミュレーションモデルの構築に必要な根幹的な問題であるため、他のアプローチも含めて、課題の達成を図りたい。
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今後の研究の推進方策 |
ソフトウェアの問題を解消すべく、可能な限りのアプローチを試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
Santa fe Instituteでの海外研修の応募が採択されず、そのための費用および研究環境整備費用を翌年に繰り越したため。
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