研究課題
本研究は、妊娠高血圧症候群の発症群と非発症群において、症例-対照研究のデザインで解毒酵素の遺伝子多型解析を行い、遺伝子多型と嗜好品摂取との相互作用を明らかにして、妊娠高血圧症候群の発症リスクの解明を目指す研究である。本研究の成果によって、妊娠高血圧症候群発症の高リスク群をあらかじめ抽出し、適切な生活指導を行うことで、妊娠高血圧症候群の発症を予防できる可能性がある。令和4年度は研究の6年目となり、前年度と同様に症例の集積に重点を置く予定であったが、研究代表者が大学医局の人事によって民間病院に異動となり、実質的に研究継続が非常に困難な状況となった。その結果、令和5年3月31日までに研究への同意が得られた人数は、令和4年3月31日時点と同様に、妊娠高血圧症候群症例92例、正常コントロール症例108例に留まっている。これらの症例においては、妊娠中の嗜好品摂取状況についてアンケート調査は実施済である。具体的にはタバコ吸引、アルコールおよびコーヒー飲料摂取状況について、摂取期間・摂取量・摂取物の銘柄などを可能な限り具体的かつ詳細に聴取した。また、アンケート調査の実施とともに、末梢血を10㏄採取し、単核球を分離した後、phenol-chloroform法によりGenomic DNAを抽出した。このGenomic DNAを用いて、上述の嗜好品に含まれる毒性物質の解毒酵素であるCYP1A1、GST-π、GST-μ、GST-θの各酵素の遺伝子多型をPCR-RFLP法により判定した。今後は、再び研究環境が整えば、更に妊娠高血圧症候群症例の集積を行い、目標症例数(100例)に到達した時点でデータ解析を行いたいと考えている。