研究課題/領域番号 |
17K09201
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
江川 美保 京都大学, 医学研究科, 助教 (50600061)
|
研究分担者 |
近藤 英治 京都大学, 医学研究科, 准教授 (10544950)
上田 敬太 京都大学, 医学研究科, 講師 (60573079)
古川 壽亮 京都大学, 医学研究科, 教授 (90275123)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 周産期うつ病 / 鉄欠乏 / フェリチン |
研究実績の概要 |
産後うつ病発症に影響を与える諸因子のうち妊婦の鉄欠乏に着目し、当科における診療録データおよび保管生体試料を用いた後ろ向き探索研究を行った。妊婦「貧血」が産後うつ病のリスク因子であることは知られているので、予防医学的観点から、貧血の前駆状態である「貧血のない鉄欠乏(Non-anemic iron deficiency;NAID)」の検討を行った。2018年2月から2019年3月の間に当院で妊婦健診を受け分娩し産後1か月健診を受けた56人の女性のうち、産科的合併症、早産、精神疾患既往者などを除き、妊娠中期と産後1か月のエジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)のデータが診療録に記録されている34人を対象とした。貧血をHb11.0g/dL未満、鉄欠乏をferritin30ng/mL未満と定義した。妊娠初期の採血ですでに貧血を呈してのが3人を除いたところ、NAIDは31人中の13人(41.9%)と比較的高頻度であった。NAID群13人と正常群18人との間に各種の背景因子や周産期アウトカムの差は認められなかった。妊娠中期から産後1か月にかけてのEPDSスコアの変化量をexact Wilcoxon signed rank testによって両群間で比較したところ、NAID群ではEPDSスコア中央値が妊娠中期(2.0 (2.0-3.3))から産後1ヵ月(5.0 (4.0-6.6))にかけて有意に上昇していたのに対して、正常群では妊娠中期(4.5 (2.3-7.3))から産後1ヵ月(4.5 (2.3-5.7))に有意な変化は認められなかった。種々の研究上の制約はあるものの、妊娠初期のNAIDは妊娠期メンタルヘルスの脆弱性の一因になっている可能性が推測された。産後うつ病予防のために妊娠初期ないし妊娠前からの鉄欠乏問題への対策を検討するためにさらなる研究が必要であると考えられた。
|