薬剤耐性菌は世界的に増加し、世界保健機関(WHO)の重要課題となっている。日本も2016年4月「薬剤耐性対策アクションプラン」を策定した。プランに掲げた対策の1つとして、国民の知識と理解の増進が必要とされている。しかし、日本における施策立案と、耐性菌へどのようなアプローチを行うべきか判断するための科学的根拠を示す研究はわずかしか見当たらない。 本研究では、抗菌薬の適正使用の推進に欠かせない一般住民、医師、抗菌薬使用実態の3点から包括的に研究する。これにより、抗菌薬の適正使用に対する知識、態度、行動の現状を把握し、行動への影響を評価することにより行動変容をもたらす要因を探索する(KAP study)とともに、抗菌薬処方の実態と不適正使用を減らすための要因を明らかにすることとした。 一般住民及び医師を対象とした意識調査は、広島県呉市、東広島市、庄原市にて実施した。また、広島県呉市、庄原市の国民健康保険の診療報酬明細書の解析を行った。 意識調査から、抗菌薬の適正使用には、住民では抗菌薬の正しい知識を持つこと、医師では医師自身の適正使用を進めること、医師の属性を考慮した研修を実施することが重要と考えられた。また、診療報酬明細書の解析結果は、WHOが抗菌薬適正使用の指標として推奨しているAWaRe分類ではAccess8%、Watch79%、Reserve1%、病名からみた抗菌薬の不適正使用のレセプトの割合は38.2%であった。
|