研究実績の概要 |
本研究の目的は3年間の縦断研究により、75歳以上90歳未満の女性の尿失禁の有訴率と経年変化、およびリスク要因を解明し、セルフケアと健康支援について提言することである。 後期高齢者の年代は、容易に様々な症候を引き起こし、尿失禁の有訴率も高いことが推測される。本研究における「尿失禁あり」の定義は、症状とQOLを兼ねた質問票のICIQ-SF (International Consultation on Incontinence - Questionnaire)(Gotoh M,etal,2009)の尿失禁頻度「なし」以外の回答とした。本研究は、所属大学の倫理委員会の承認を得て実施している。 A市内に居住する75歳以上90歳未満の女性122,528人のうち400人(約0.0033%)を無作為に抽出し、郵送で協力を依頼した。本研究は2年目調査として、2018年7月に無記名自記式質問紙調査を実施した。有効回答率は21.0%(84人)、平均年齢は81.8±3.9(歳)であった。自己申告による尿失禁の有訴率は54.8%(46人)、ICIQ-SFの平均値は7.55±4.2であった。そのうち1年前と比較して尿失禁の状態に変化ありの人(10人)のICIQ-SFは10.8±5.4であり、変化なしの人(30人)の6.23±3.7より有意に高い得点であった(p=0.014,Mann-WhitneyのU検定)。このように対象者の54.8%が尿失禁ありと回答していたことから、地域に居住する後期高齢者の女性の半数以上に自己申告による尿失禁がみられた。さらに1年前と比較して尿失禁の状態の変化を自覚していた人は、尿失禁により毎日の生活がそこなわれている程度が大きいと回答していた。以上より後期高齢者の女性における1年間の経年的な加齢変化を予測し、その健康長寿のためのタイムリーな排尿ケアが重要といえる。
|