研究実績の概要 |
2019年7月に本研究課題「後期高齢者の女性の尿失禁リスク要因解明と対処行動促進」の3年目調査を実施した。本研究の目的は3年間の縦断研究により、75歳以上90歳未満の女性の尿失禁の有訴率と経年変化を明らかにし、支援について提言することである。本研究における「尿失禁あり」の定義は、症状とQOLを兼ねた質問票のICIQ-SF (International Consultation on Incontinence - Questionnaire)(Gotoh M,etal,2009)の尿失禁頻度「なし」以外の回答とした。 本研究は、所属大学の倫理委員会の承認を得て実施した。今回の3年目調査においては、1回目調査(2018年7月)に続いて2回目調査(2019年7月)に回答した84人へ自記式質問紙を送付し、そのうち67人から回答があったものである(有効回答率79.8%)。回答者の平均年齢は82.8±3.9(歳)、自己申告による尿失禁の有訴率は47.8%(32人)、ICIQ-SFの得点の平均値±標準偏差は6.3±4.7であった。 このうち1年前と比較して尿失禁の状態に変化があった人(6人)のICIQ-SFは10.0±1.6、変化があったかわからない人(3人)は8.3±2.5、変化なしの人(19人)は6.5±4.3であった。これらの回答によって有意差はなかった(p=0.199,一元配置分散分析)ものの、この得点の傾向から、1年前と比較して尿失禁の状態に変化があった人の尿失禁に関するQOLは、低い傾向を示しており、尿失禁によってその生活が損なわれている感覚が高くなった可能性が考えられた。以上のことから、尿失禁によって生活のどのような側面が損なわれて不自由さが増しているのかについて把握し、この年代における活動性の低下とそれによる自立度の低下を招かないような支援が必要と考えられる。
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