研究課題
厚生労働省の患者調査ではわが国のうつ病の患者数は110万人を超えている。しかし、有病率を考慮するとわが国の実際のうつ病患者数は300万人以上であることが想定され、まだまだ多くの患者が医療機関を受診していないか、専門的な治療を受けていないという実態がある。また、高齢化社会に伴う認知症患者の急増も大きな問題となっており、わが国はプライマリ・ケア医との連携がなければ精神医療が成り立たなくなる時代を迎えようとしている。しかしわが国はプライマリ・ケア医に対する精神科研修体制の不備や精神科専門医療機関との連携体制の不十分さがあることが指摘されており、有効な対策の提言が求められている。本研究ではプライマリ・ケア医を対象として特定二次医療圏での網羅的なデータ収集および自治医科大学卒業生の地域医療ネットワークを生かした全国的調査を展開し、地域医療における精神医療ニーズの明確化と効果的な介入手段の探索を進めた。栃木県県南医療圏においてプライマリ・ケアに従事する医療機関と全国でプライマリ・ケアに従事する自治医科大学卒業生の勤務する医療機関に対してアンケート調査を行い、栃木県県南医療圏から69件、自治医科大学卒業生の勤務する医療機関から180件の回答を得た。その結果、栃木県県南医療圏のプライマリ・ケア医の35%、自治医科大学卒業生のプライマリ・ケア医の57%が週一回以上精神疾患を有する患者に関わり、主に抑うつ状態、不安焦燥、睡眠障害、認知症の診療に当たっていた。また、精神医療に関心があるプライマリ・ケア医、精神医療スキルに自信があるプライマリ・ケア医が少なくとも1名以上所属している二次医療圏では、2021年度の自殺死亡率が低いことが判明した(P=0.029、P=0.003)。これらの結果からプライマリ・ケア医の精神医療への関与意思が地域の自殺死亡率と関連することが示唆された。
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