研究課題/領域番号 |
17K09215
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
山岸 絵美 日本医科大学, 医学部, 助教 (30560271)
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研究分担者 |
石川 源 日本医科大学, 医学部, 講師 (20287767)
越塚 登 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 教授 (40262266)
久野 将宗 日本医科大学, 医学部, 助教 (60350104)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 妊産婦避難者 / 災害弱者 / アプリ / 位置情報 / 状態把握 |
研究実績の概要 |
1.情報収集: ①南多摩医療圏災害医療ワーキンググループを通し、南多摩保健所および多摩市防災課のその後を調査。いずれもシミュレーション演習には積極性を見せており、さらに多摩市は女子大学と提携し母子救護所の設営に乗り出していることを確認した。現在は設営を行うことは決定し、その際の詳細条件を詰めている。またNPO団体を通して、今後アプリの有用性検討の1つとして、一般妊婦対象にアンケートを行う場合は協力を得ることができそうである。②全国で同じようなアプリが開発されているかを調査。同様のアプリを開発するか、アプリとの連携を図れるかを判断する材料とする。③熊本での情報収集は行わなかったが、今後発災の可能性がある地域として高知県で情報収集。行政・医療関係者と勉強会を開催し、災害医療にITを取り入れていくにあたり、整えなければならない環境、また現状各市で取り入れられているアプリについて確認を行った。
2.シミュレーション演習: 南多摩保健所・地域災害医療従事者らとともに研修を行った。実際に多摩市内で避難所を複数個所設定。各避難所にいる避難者役にアプリを使用させ、避難者に接触する医療チームおよび本部で避難者位置や避難者の情報をどのように認識できるか、またアプリが有用であるかを検討した。本部側では妊産婦避難者の場所を把握するうえで有用であり、接触者は情報を得るうえで有用であると思われる。今後の実証実験に関しては多摩市ではなく、他県で行うことを想定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アプリの有用性を判断するうえで、判断項目を2項目にしぼらざるを得なくなった。 今回断念することになった「アプリ利用者の状態を判断する」機能については、①現状妊産婦のトリアージ基準が想定されていない、②判断項目の1つになる「痛み」の程度は個人差が大きい、③判断項目が多すぎて判定が煩雑になる、などの理由により判断基準を設定するのが困難としたためである。このため今後は「位置把握」「情報収集における利便性」2項目にしぼることになる。 一方で今後の律速段階となる実証検証場所であるが、IT取入れに積極的な県と接触ができ、さらに県全体の協力が得られる可能性がでてきている。こちらに関しては1つの医療圏での検証よりさらに充実したものになると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1.検証 「位置把握」「情報収集における利便性」2項目を判定するにあたり、今年度は実証検証を通して有用性を明らかにしていく。昨年度は勉強会として、県の政策担当と顔合わせをするに終わった。今年度検証を行うには県内全市役所の担当者の協力が必須であり、前回参加しなかった市の担当者との連携が必要である。その際、市によってはすでに電子母子手帳アプリを導入しており、そのような既存アプリとの連携をとるか、新たにアプリを1から作成するかについても考慮しなければならない。ただし、既存アプリはいずれも平時に用いるものであり、災害時の対策は練られていない。そのため、「既存との連携か新規か」の検証は最終段階とし、今年度は「災害時にデバイスを使用する」ことの評価を行うものとする。 2.アプリ開発 「既存との連携か、新規か」の検証前のため、災害時に必要な項目の列挙にとどめ、これらの項目を個人情報としてどこまで開示することを利用者が望むのかを、実際にユーザーとなる妊産婦にアンケートをとることを考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は「既存のアプリとの連携か新規作成か」という評価項目があらたに生じたため、アプリの実装がすすまなかった。また、実証実験場所として想定していた多摩医療圏でなく、他県での検証を行う可能性が出てきたため、シミュレーションを1回のみ開催し終了したことから、次年度使用額が生じている。 来年度は県での実証実験および、アプリ開発に伴う妊産婦へのアンケートを行うため、今年度の繰越金を使用する予定である。また、多摩医療県内での母子救護所が決定した場合は、そこを利用したシミュレーションを行いたい。
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