研究成果の概要 |
過去の災害時データや訓練データより, 災害時妊産婦救護・医療展開を行う際の問題点は, 妊産婦の所在確認, 妊産婦の受診先, 妊産婦の避難先の3点であることを確認した.これに対し妊産婦自身が使用するスマートフォンアプリの開発, 及び非周産期医療従事者対象の周産期傷病者対応能力向上のための教育システム開発を行った. 前者は妊産婦の所在, 周囲の受診先・避難先のマップ表示を可能とし, 妊婦健診記録及び被災時のトリアージで赤とすべき周産期症状チェックの機能も果たした. さらに, 後者により, 平時から反復演習を行うことで非周産期医療従事者でも災害時妊産婦救護・医療提供を行いやすくできると考えられた.
|
研究成果の学術的意義や社会的意義 |
我が国における災害医療は1995年阪神淡路大震災以降急速に進歩してきた. しかし, 災害弱者である妊産婦の救護に関してはその限りではない.災害医療従事者の多くが非周産期医療従事者であることが理由の一つだ. 災害時に周産期傷病者専用の救護所を設置することや周産期医療従事者を災害医療現場に多く配置することも対応策ではあるが, それには人材・資機材確保や設置場所など新たな問題が生じ, 実現不可能な地域もある. 本研究成果は, 非周産期医療従事者がトリアージする状況を鑑み, 平時からの教育システム開発と傷病者自身が身に着ける災害時に有用となるツール開発という, 汎用性の高い解決策となった.
|