研究課題/領域番号 |
17K09216
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研究機関 | 明治薬科大学 |
研究代表者 |
庄野 あい子 明治薬科大学, 薬学部, 講師 (50625308)
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研究分担者 |
近藤 正英 筑波大学, 医学医療系, 教授 (70334068)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 妊婦 / ワクチン / 季節性インフルエンザ |
研究実績の概要 |
わが国においては、長らく、他の先進国と比べて公的に接種するワクチンの種類が少ない、いわゆる「ワクチン・ギャップ」が生じてきた。昨今は、そのギャップが解消されつつあるものの、妊婦のワクチン接種については、未だ限定的である。 季節性インフルエンザワクチンについて、WHOは、接種推奨の対象者として、妊婦は最も優先順位が高いとしている。また、国によっては、妊婦の季節性インフルエンザワクチンをroutine vaccinationとして位置付けている。一方、わが国においては、妊婦は季節性インフルエンザワクチンの定期接種対象には位置づけられておらず、任意接種である。本研究では、妊婦に焦点をあて接種に関連する因子に着目するとともに、社会的背景に着目し研究を進めている。 3年目となる2019年度は、過年度に実施した全国の妊産婦を対象として行った季節性インフルエンザワクチン接種に関するWeb調査の結果について、論文として取りまとめた。対象者のうち約40%の妊婦が季節性インフルエンザのワクチン接種をしたと回答し、そのうち接種については、産科医等による薦めと関連が示された。 妊婦を対象とした季節性インフルエンザのワクチン接種は、現時点において任意接種であるが、自治体によっては、独自の助成を実施している。今後、季節性インフルエンザワクチン接種が、妊婦を対象として定期接種の議論がなされる際には、費用対効果に関する情報が必要である。したがって、妊婦の季節性インフルエンザワクチン接種の費用対効果を明らかにすることを目的として、更に研究を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
妊産婦を対象にした調査を実施し、季節性インフルエンザワクチン接種に関連する因子を明らかにした。続いて、妊婦の季節性インフルエンザワクチン接種の費用効果分析へと研究を進めた。 費用対効果研究においては、最初に、先進諸外国における費用効果分析についてレビューを行った。レビューは、英文誌に掲載された8報の論文を対象に行った。レビュー項目は、対象国、(モデル上の組み入れ変数として)比較対象、ワクチンの接種時期、費用、効果、アウトカム等である。対象となった8報の論文のうち、国別では、米国の論文が4報、英国、ベルギー、カナダ、マリの論文が各1報ずつであった。比較対象は、すべて接種なし(do-nothing)であった。効果は、母と併せて児をモデル化しているものが多く、母親のみは2報であった。費用については、共通するものとして、ワクチン接種費用、インフルエンザ関連の治療費用(入院、外来)であり、併せて労働性損失を含めている論文が含まれた。また、モデル上、ワクチン関連の副作用が考慮されている論文と考慮されていない論文があった。妊娠周期におけるワクチン接種時期については、モデル上、明確に定義されている論文に対して、定義されていない論文が含まれた。費用効果分析におけるアウトカムは、QALY(質調整生存年)が7報であり、DALY(障害調整生存年)が1報であった。妊婦のインフルエンザワクチンについては、すでにいくつかの国において、費用対効果が検討されている。しかし、モデルの前提や組入変数については一様ではないことが明らかになった。諸外国におけるモデルを参考にして、わが国の背景を考慮したモデル構築を行うとともに、費用対効果を算出した。これらの結果をもとに、論文として取りまとめを行った。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究を進める課程において、全国の自治体(市区町村)によっては、インフルエンザワクチン接種に際して、独自の対象を設け、助成を行っており、妊婦もその対象の一つとしている自治体があることが明らかになった。自治体による助成が妊婦における季節性インフルエンザワクチン接種行動に関係している可能性がある。しかしながら、その全国な助成実施状況は明らかになっていない。よって、本研究では、妊婦等に対する全国的な助成実施状況を明らかにすべく、全国の自治体を対象に、独自の助成実施状況に関する調査研究を行った。今後はその取りまとめを行う予定にしている。
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次年度使用額が生じた理由 |
3年目に行った自治体対象の調査について、調査票回収作業および入力作業が長引いた。 よって、最終年は調査結果について取りまとめを行う予定である。
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