研究課題/領域番号 |
17K09220
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
反町 吉秀 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 自殺総合対策推進センター, 室長 (80253144)
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研究分担者 |
金子 善博 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 自殺総合対策推進センター, 室長 (70344752) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 自殺手段 / 手段制限 / 練炭自殺 / コミュニティトライアル / メディア |
研究実績の概要 |
本研究は、我が国の過去(1950年代~60年代)における自殺手段制限による自殺の減少の成功や、近年の諸外国における自殺手段制限の政策導入のプロセスと阻害要因、促進要因を明らかにし、自殺手段制限の自治体による条例化や国レベルでの自殺対策政策に対して政策提言を行うことを目的としている。 平成29年度は、a) 我が国の過去における自殺手段としての睡眠薬の入手制限に関する系統的レビュー研究、b)自殺の物理的手段制限の実施に関するインタビュー調査、c)自殺手段の情報制限の実施に関するインタビュー調査を実施した。 a) については、1950年代~60年代に実施された睡眠薬の入手制限のための法的規制と自殺の減少の関係について検討を行い、その政策導入のプロセス並びに自殺の減少との関連について検討を行った。その結果、睡眠薬の入手制限のための法的規制と自殺の減少には多少の時間的なずれがあり、両者の因果関係は従来言われていた程明確ではないことが示唆された。1950年代の自殺の急減には、未知の要因を含む他の要因の関与が示唆された。 b)とc) については、香港の関係機関を訪問し、関係者にインタビュー調査を行い、質的な検討を行った。b) については、練炭自殺の物理的手段制限による自殺対策のコミュニティトライアルの成功の背景には、香港自殺予防センターのリーダーシップの下、マスメディアを含む様々なステークホールダーの関与があることが示唆された。c)については、近年、香港において、新しい自殺手段の蔓延の予防に成功しているメカニズムの一つとして、香港自殺予防センターとメディアとが、自殺予防につながる自殺関係報道のあり方について日常的な対話を繰り返すことを通じて、新たな自殺手段の蔓延を助長しないメディア報道の促進があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究に、予定通りの時間と労力を確保することができたこと、並びに、研究協力者の良好な協力があったことなどが理由として考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、a) 自殺手段としての睡眠薬の入手制限に関する系統的レビュー研究を継続し、更に踏み込んだ検討を行う。また、b)自殺の物理的手段制限の実施に関するインタビュー調査、c)自殺手段の情報制限の実施に関するインタビュー調査については、香港で実施したものと同様の調査を、台湾並びにオーストリアにおいて実施する予定である。これらにより、自殺手段の政策導入のプロセスと阻害要因、促進要因を明らかにし、条例化や自殺対策大綱への政策的位置づけのための政策提言のためのステップとしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じたのには次の2つの理由がある。1)研究補助を担当する人の雇用を予定していたが、実際には雇用をせずに、研究を実施したこと、2)海外出張を予定では2カ国予定していたが、実際には1カ国となったこと等により、旅費に関する出費が予定よりすくなくなったこと。 今年度は、昨年度訪問できなかったところを含め、着実に海外出張による調査を進めたい。また、できれば、研究補助者を雇用して、研究を遂行したいと考えている。
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