方法:健診対象者の属性情報をもとにした接触者健診モデルをベイジアンネットワークの手法を用いて構築し、保健所における接触者健診結果情報からの学習により、IGRA陽性者の感染確率についての推定を事前確率のかたちで推定を行なった。ベイジアンネットワークの初発患者ノードには、性、年齢階級、出生国(外国出生)、塗抹検査結果、胸部レントゲン有空洞、受診の遅れ、喫煙を設定した。接触者のノードには、IGRA結果、性、年齢階級、接触タイプ(家族、その他)、喫煙、接触濃厚度(現在のところ接触時間や接触空間等から便宜的に濃厚、非濃厚)を設定した。分析はBaypLinkT(NTT数理データシステム)上で行なった。
結果:保健所データの一部未収集項目データを仮想的に補完したシミュレーション用データによる結果は以下のようになった。属性情報を情報なしを基準とした場合と情報を学習した場合のIGRA陽性患者の感染確率(真の感染確率)を推定し、比較した。学習情報として情報価値の高いものは初発患者有空洞情報、接触タイプ、接触濃厚度、接触者では外国出生の項目となった。用いたシミュレーションデータは集団感染事例が含まれており、接触者対象集団の感染率は比較的高いと考えられるが、推定された感染確率としての事前確率では約1.2~1.7倍程度の事前確率の上昇がみられた。結果の一例をあげると、初発患者有空洞情報、接触タイプ、接触濃厚度を無情報、外国出生のみありとした場合と初発患者有空洞情報、接触タイプ、接触濃厚度ありとした場合は0.89 / 0.52 = 1.7であった。接触濃厚度、外国出生を無情報、初発患者有空洞情報、接触タイプをありとした場合から、接触濃厚度、外国出生をありとした場合は0.89 / 0.61 = 1.4 であった。
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