研究課題/領域番号 |
17K09223
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研究機関 | 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所 |
研究代表者 |
倉田 貴子 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 主任研究員 (70435890)
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研究分担者 |
上林 大起 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 研究員 (50622560)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 麻疹 / ワクチン / 抗体 / avidity |
研究実績の概要 |
2015年3月の麻疹排除達成以前のアウトブレイクでは、麻疹患者の殆どがワクチン未接種者であったが、排除達成以降、ワクチン接種歴を有する患者の割合が増加している。本年度は日本国内で発生した麻疹患者において特異的抗体価とその抗体の結合力からSecondary vaccine failure(SVF)の患者を推定し、それぞれにおいて急性期の血液生化学的性状測定することで、ワクチン未接種および未罹患の患者とSVFの患者間での血液生化学性状の違いを検討した。対象群は、核酸検査で麻疹ウイルスが検出された成人麻疹患者25名とし、発症後検体採取までの日数は中央値2日範囲0-10日であった。これらのうち、発症時の麻疹特異的抗体価と結合力が高い(avidity>60%)患者22名(88%)をSVFとした。SVFのうち発熱、発疹、カタル症状がそろわない修飾麻疹を呈した患者は、20名(90.9%)であった。これらSVFの患者についてLDH(lactate dehydrogenase)の動態を中心に、AST(Alanine Aminotransferase), ALT(Aspartate Aminotransferase), CRP(C-reactive protein)の4項目について検討した。その結果、患者のLDH、AST, ALTは基準値の範囲内であったが、CRPについては基準値よりも高い傾向がみられた。これまでに典型的な麻疹患者ではLDHが上昇することが知られていたが、今回SVF患者ではLDHの上昇はみられなかった。麻疹患者におけるLDHの動態の違いは、ウイルスの増殖に伴うリンパ球破壊の程度の差を反映しており、ワクチンで獲得した免疫に影響をうける指標の一つとなることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
麻疹患者では乳酸脱水素酵素(LDH)が有意に増加することが報告されているが、過去の報告は重篤な症状の典型麻疹患者を対象としており、SVF 患者での報告はほとんどない。そこで成人のSVF患者におけるLDHの動態を中心に、AST(Alanine Aminotransferase), ALT(Aspartate Aminotransferase), CRP(C-reactive protein)の4項目について検討した。まず成人のSVF患者を抽出するため、麻疹特異的抗体価とavidityを測定した。対象は成人麻疹患者25名で年齢中央値24歳(範囲20-39)、性別は男性7人(28%)で発症後検体採取までの日数は中央値2日範囲0-10日であった。発症時の麻疹特異的抗体およびavidityが高い(>60%)患者22名(88%)をSVFとした。SVFのうち発熱、発疹、カタル症状がそろわない修飾麻疹を呈した患者は、20名(90.9%)であった。それらの患者において血液生化学的性状を検討した結果、それぞれの中央値はAST 20U/L、範囲16-44(基準値10-40U/L)、ALT 4U/L、範囲4-12(基準値5―45U/L)、CRP 1.32mg/dL、範囲0.2-14.68(基準値0.3mg/dL未満)、LDH 204U/L、範囲148-360(基準値120-245U/L)であった。成人麻疹患者のAST, ALT, LDHの値は基準値の範囲内であったが、CRPは基準値よりも高かった。麻疹患者に典型的とされたLDHはSVF患者では上昇しなかった。LDHの動態はウイルス増殖の効率を反映しており、麻疹患者においてワクチン未接種および未罹患の患者とSVFを区別する指標の一つになりうる可能性が考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
パイロット研究よりも症例数を増やすとともに、血清における麻疹特異的抗体価、avidity及び麻疹ウイルスに対する中和抗体を測定し、検出されたウイルスコピー数、臨床症状と合わせて相関解析行い、特異的な液性防御免疫の存在が感染後に引き起こされる全身的な免疫制御に及ぼす影響を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実施予定であったELISAを一部延期したため、当該予算の次年度に繰り越した。
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