研究課題/領域番号 |
17K09227
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中尾 倫子 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (30597216)
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研究分担者 |
大門 雅夫 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (80343094)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 夜間勤務 / トロンボキサンB2 / 血小板凝集能 |
研究実績の概要 |
日中勤務と夜間勤務を繰り返す交代勤務は、心・脳血管障害発症リスクの増加と関連していることが報告されている。心・脳血管障害での血管内血栓形成には、血管内皮機能障害や血小板機能の活性化が大きく関わっている。夜間勤務直後に血管内皮機能が低下することが報告されているが、血小板機能に対する夜間勤務の影響はわかっていない。そこで、夜間勤務後に血小板機能が亢進しているかを調べた。当院で交代勤務に従事する健常医療従事者11名を対象に、①前日に夜間勤務に従事していない日中勤務翌朝8時から9時(ベースライン)②夜間勤務後の朝8時から9時の2回のタイミングで、血小板機能を測定した。血小板機能の指標として、血小板凝集能(自然凝集能および低濃度アゴニスト刺激による血小板凝集能)と血清アラキドン酸代謝産物濃度(強い血小板凝集を引き起こすトロンボキサンA2(TxA2)代謝産物であるTxB2等)を測定した。夜間勤務後は、ベースラインと比較して、血小板凝集能に有意差はみられなかったが、TxB2を始めとするアラキドン酸代謝産物の血清中の濃度が上昇していた。夜間勤務中の睡眠時間はベースラインと比較して有意に短かったが、夜間勤務後の血清TxB2の増加量との有意な相関は認められなかった。また、夜間勤務後の血清TxB2の増加量は、年齢、交代勤務従事歴、血圧、血糖、脂質などの他のパラメータとも有意に相関しなかった。本研究により、夜間勤務によって、血小板感受性が亢進する可能性が示された。交代勤務が心・脳血管障害の発症リスクの増加と関連している要因の一つとなるかもしれないと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記研究結果をまとめ、英文論文として発表した(Journal of Occupational Health 2018; 60(3)掲載予定)。
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今後の研究の推進方策 |
夜間勤務後に亢進した血小板の感受性がどれくらいの経過で改善するか測定する。可能であれば、健常人のみならず、虚血性心疾患などのベースラインから血小板機能が亢進している被験者でも、同様の測定を行う予定である。これらの結果から、適正な夜間勤務の頻度などのついての知見が得られ、交代勤務者の勤務体系の適正化に向けての基礎的検討になると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
血清トロンボキサンB2を始めとするアラキドン酸代謝産物の測定は、一定数以上集まってから一斉に測定するため、次年度使用額が生じた。同一被験者で、夜間勤務後に数回のポイントで血小板機能を測定する予定である。
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