日中勤務と夜間勤務を繰り返す交代勤務は、心・脳血管障害発症リスクの増加と関連していることが報告されている。心・脳血管障害での血管内血栓形成には、血管内皮機能障害や血小板機能の活性化が大きく関わっている。夜間勤務直後に血管内皮機能が低下することが報告されているが、血小板機能に対する夜間勤務の影響はわかっていない。そこで、夜間勤務後に血小板機能が亢進しているかを調べた。前年度までの健常人を対象とした研究で、血清中のトロンボキサンB2(強い血小板凝集を引き起こすトロンボキサンA2の代謝産物)濃度が夜間勤務によって有意に上昇することを確認した。本成果により夜間勤務によって血小板機能が亢進する可能性を示し、研究成果を論文で発表した。 夜間勤務従事者の中には、基礎疾患を合併した勤務者も存在する。このため、虚血性心疾患が夜間勤務後の血小板機能に影響を及ぼす可能性について検討が必要であると考えた。そこで、今年度は虚血性心疾患患者の睡眠の状況と、血小板機能との関連について後ろ向きに検討した。アスピリン内服下でも虚血性心疾患を再発してしまう患者が一定数存在することが知られている。その一つの原因としてアスピリン不応性の可能性が考えられる。このアスピリン不応性を判定する検査として、トロンボキサンA2の安定な代謝産物である11-デヒドロトロンボキサンB2の尿中濃度が有用であると言われている。今回、アスピリン内服中の虚血性心疾患患者60名を対象として、尿中11-デヒドロトロンボキサンB2濃度と不眠症の有無に関連があるか調べた。解析した結果、不眠症あり群(33名)と不眠症なし群(27名)との間で、尿中11-デヒドロトロンボキサンB2濃度に有意な差は認められなかった。高血圧、糖尿病などの動脈硬化危険因子で補正しても両群に有意差は認められなかった。
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