研究実績の概要 |
本研究は入院後新規に発生した病的骨折以外の骨折および外傷性頭蓋内出血症例の発生予測モデル作成とその検証、追加的医療費を1,000施設以上の急性期病院のDPCデータを用いて算出することを目的としている。入院後の新規骨折および外傷性頭蓋内出血の原因の多くは転倒・転落であると推測されることからこの研究は転倒・転落に起因する重大障害発生の予防につながることが期待される。 初年度は、予備的調査研究として単施設におけるDPCデータを用いた事象抽出の精度確認と看護必要度データを用いた転倒・転落リスクスコアの開発を行った。 本年度は我が国の急性期病院のDPCデータを用いて65歳以上患者における入院後新規に発生した病的骨折以外の骨折および外傷性頭蓋内出血の臨床疫学的特性と在院死亡のリスク因子解析を行った。対象は2010から2016年度の65歳以上の退院患者26,660,565症例のうち、 主病名もしくは入院契機病名が外傷ではなく、入院後発生疾患名に骨折(59,775例)もしくは外傷性頭部損傷疾患名(12,228例)が登録されていた症例である。入院中の骨折発生率 は0.32% で、女性の骨折発生率が高かった(男性0.22%,女性0.43%,P<0.01)。死亡退院となった症例は6,684例で、在院死亡率 は8.2%、多変量解析を用いた入院死亡リスク因子解析では外傷性頭部損傷も発生した症例、大腿骨骨折、上腕骨骨折、入院時歩行自立、BMI<18.5、男性等が在院死亡リスクを高めた。外傷性頭部損傷の発生率は 0.046%、在院死亡率は 17.9%で、血腫除去術等の頭部手術実施、入院時歩行自立、向精神薬、男性、BMI<18.5等が在院死亡リスクを増加させる因子となった。本研究結果は入院中の転倒・転落で骨折または外傷性頭部損傷が発生した際に重篤な転帰をとるリスクの高い患者の識別に応用できる可能性がある。
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