研究課題
【背景と目的】高齢者の多剤処方は、薬剤のアドヒアランスの低下ならびに薬物相互作用による有害事象を来す危険性がある。日本における高齢者の多剤処方率は50%と高く、欧米と同等である。薬物有害事象が5剤以上の多剤内服の高齢者で起こりやすいことから、薬物有害事象を回避する目的もあり、多剤処方削減を目的として、保険制度上のインセンティブ制度が開始されたこの制度によって薬剤処方削減が加速したかどうかを検討する。【方法】特定機能病院(大学病院)、急性期基幹病院(地域にある一般病院)、慢性療養型病院各1施設の高齢入院患者で神経疾患の患者を対象とし、インセンティブ制度前、後1年間の入院患者の入院時薬剤数、退院時薬剤数を調査した。また、インセンティブ制度が開始された日の前に入院し、開始後に退院した患者を除いた。死亡退院患者を除外した。【結果】これらの病院においては、入院前後での処方数の変化はあったもののインセンティブ制度前後で比較したが、差はなかった。糖尿病患者においては、一部、入退院でのインセンティブ制度後の処方薬減少があることがわかった。【考察】この差がみられなかった要因として、既に、ポリファーマシーへの臨床医のアテンションがかかっていたものと推定した。糖尿病患者でのサブ解析では、一部、インセンティブ制度が有用である可能性が挙げられた。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
J Clin Pharm Ther
巻: 46 ページ: 794-799