研究課題/領域番号 |
17K09236
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
川村 英樹 鹿児島大学, 鹿児島大学病院, 特例准教授 (90647596)
|
研究分担者 |
徳田 浩一 東北大学, 大学病院, 准教授 (10518400) [辞退]
大山 陽子 鹿児島大学, 鹿児島大学病院, 医員 (20583470)
西 順一郎 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (40295241)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 薬剤耐性菌 / サーベイランス / 遺伝子タイピング |
研究実績の概要 |
2020年度は、新型コロナウイルス感染症の対応のため、進捗がかなり遅れているが、2017-2019年度の鹿児島感染制御サーベイランスシステム; KICA)に入力された各医療機関の薬剤耐性菌検出データ解析および院内環境から検出された薬剤耐性菌の解析を引き続き行った。黄色ブドウ球菌に占めるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の比率および緑膿菌に占めるカルバペネム耐性株・2剤耐性株・3剤耐性株の比率は引き続き経時的に低下傾向を認めていた。 KICAの手指消毒薬使用量・抗菌薬使用量のデータも評価し検討を進めたが、特に有意な関連性は見いだせなかった。 鹿児島大学病院で発生した多剤耐性アシネトバクターや多剤耐性緑膿菌多発事例について菌株の解析を行うと同時に、環境から検出された薬剤耐性グラム陰性桿菌の解析を進めた。菌株間では緑膿菌・アシネトバクターに加え腸内細菌科細菌でもプラスミドを介した薬剤耐性遺伝子の伝達が推定された。 医療環境から は通常臨床検体では検出されないカルバペネマーゼ遺伝子保有のグラム陰性菌が検出されており、環境汚染は短期間でおこることが推察され、その対策の効果を今後評価予定である。 MRSAに関しては市中感染株の拡大が問題となっているが、サーベイランスからは大きな拡大はみられず、今後さらに遺伝子解析を進めていく。 引き続き県内で検出された多剤耐性緑膿菌やカルバペネム耐性腸内細菌科細菌等の菌株収集を行い、次年度も継続し評価を行っていく予定である
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度は施設内だけではなく地域における新型コロナウイルス感染症対応に業務を割く必要が生じた。このため、研究時間に割り当てることができず、本課題の検討進捗がかなり遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
MRSAやグラム陰性薬剤耐性菌菌株の収集をひきつづき進めながら、残る課題となる薬剤耐性菌の伝播リスクの疫学的解析を、新たな課題として医療環境汚染からの伝播という視点もあわせて、リスク解析とその対策方法・有用性に関する検討を進めていく。特にいずれの薬剤耐性菌菌株の遺伝子タイピング結果からリスクの高い菌株解析と、臨床的にリスク評価が可能な薬剤感受性結果などの指標評価もあわせてさらにすすめていく。 今回伝播リスクとなる手指消毒薬使用量・抗菌薬使用量については、有意な結果が見いだせなかったが、手指衛生については使用量以外の他の指標の検索、抗菌薬についてはとくに耐性菌選択リスクと関連性の高い抗菌薬の系統について、精査を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の発生、地域での拡大に対し、感染症専門医としての院内外での対応業務が増大し、研究活動の確保に困難が生じたこと、また当初予定をしていた国際学会等での発表のために想定した旅費の使用が減ったことなどから、次年度使用額が生じた。 一方、検討する菌株収集や結果の集積がすすみ、次年度はこれらの結果の集約・とりまとめ作業をおこない、使用を進めていく。
|