研究課題/領域番号 |
17K09244
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研究機関 | 北海道薬科大学 |
研究代表者 |
岸本 桂子 北海道薬科大学, 薬学部, 准教授 (50458866)
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研究分担者 |
櫻井 秀彦 北海道薬科大学, 薬学部, 教授 (70326560)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 患者が感じる有益性 |
研究実績の概要 |
平成29年度の研究計画は、申請者らが想定していない情報伝達の積極性に対する患者側の阻害要因について、薬剤師へのインタビュー及び患者へのインタビューを行い、阻害要因の探索することである。 薬剤師へのインタビューの結果:「薬局における患者から薬剤師への情報伝達の積極性に対する患者側の阻害要因」について、5名の薬剤師にインタビューを行った。患者側の阻害要因として「患者が求める薬剤師像とのギャップ」「薬剤師業務を理解していないこと」、薬剤師側の要因として「個人にフォーカスを当てた聞き取りが不十分」であることが挙げられた。患者は薬物療法等について相談したい相手は求めているが、それは薬剤師ではない(主に医師である)現状があり、薬剤師に相談し解決可能なことと、医師に相談し解決可能なことの整理が必要である。また、患者へのインタビューであるが、これまでは協力者を薬局でリクルートすることが多かったが、今回の研究テーマの場合は薬局を介さないリクルート方法が適切との意見を得た。 患者へのインタビューの結果:「薬局において薬剤師からの質問に対して、戸惑いやネガティブな感情を抱いたこと」に関し、研究者と研究協力者(患者)の1対1でのインタビュー調査(約1時間)を8名を対象に行った。患者の情報伝達の積極性を阻害する主要因は「薬剤師との対話に有益性を感じない(有益性=知らない情報が得られる、薬の変更)」であった。薬剤師の確認作業により処方に問題がなければ目に見えるアウトカムである「薬の変更」は発生しない。「有益性=薬剤師による確認作業」となるよう、患者の認知の変化が必要である。また、その他、生活習慣病の改善に取り組む患者にとっては、クリニックで検査値が改善していない場合、落ち込んだ気持ちとなっており、薬局での会話は「傷口に塩を塗られたように感じる」との患者の新たな思いを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
方法の変更は生じたが(患者を対象としたインタビュー調査のリクルート方法の変更)、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
薬局外来患者を対象とした質問紙による量的調査を行い、認知情報の非対称性と情報伝達積極性との関連性の検証及び情報伝達阻害要因の特定を行う。 (1)情報伝達積極性の測定尺度の作成:質問紙による量的調査を行う準備として、情報伝達積極性の測定尺度を、Patient Activation Measure(Judith H Hibbard et al. 2004)の開発手順を参考に作成する。①文献調査に基づき質問内容の試作を行う。②内容妥当性を得るために、薬局薬剤師(20名)を対象に郵送調査を行い、内容のコンセンサスを図る。③信頼性を担保するために、定期的来局患者100名(web調査会社の患者モニター)を対象にweb調査を行い、α係数、項目-総得点の相関から内定整合性の評価を行い、更に30名(先行調査の100名の中からリクルート)を対象に試験再試験信頼性評価を行う。 (2)来局外来患者を対象とした質問紙による量的調査の実施:定期来局患者を対象に、薬局薬剤師に質問紙及び返信用封筒の配布を依頼し、実査での調査を行う。①200名分以上の質問紙回収を目標とし、500名に対し質問紙を配布する(回収率40%と想定)。②特定の薬局に集中すると回答が偏る可能性があるため、協力薬局を20店舗リクルートする。③回収率を上げるために、質問紙配布の際にボールペンをノベルティとして渡す。④協力薬剤師が回答を閲覧できないよう、回答者自身が記入済み質問紙を封筒に入れ厳封する。⑤調査データから、認知情報の非対称性と情報伝達の積極性との関連性の分析及び、アソシエーション分析により情報伝達の阻害要因の特定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該助成金が生じた状況:薬剤師に対するインタビューに掛かる旅費が予定より下回った。 翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画:定期的来局患者100名(web調査会社の患者モニター)を対象に情報伝達積極性の測定尺度の検証を行う際、より厳密な調査対象者のリクルートを行うため、スクリーニング調査の際の質問項目を増やすのに用いる。
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