研究課題/領域番号 |
17K09252
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
太田 好紀 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (10516404)
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研究分担者 |
森本 剛 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (30378640)
作間 未織 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (60349587)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 医療の質 / 臨床疫学研究 / 手術関連有害事象 / 医原性有害事象 |
研究実績の概要 |
手術に関連した医原性有害事象は喫緊の課題であるが、小児外科領域の患者を対象とした医原性有害事象に関する質の高い臨床疫学研究は、世界でも類を見ないのが現状である。我々は本邦の小児における周術期の医原性有害事象の現状を明らかにし、効果的な対策を提示するために、小児入院患者を対象に多施設ヒストリカルコホート研究を実施した。 2019年度は、研究計画調書に基づき、2018年度から継続して作成しているデータベースを完成させ、それを用いて解析を行った。データベースは、事前に訓練されたレビューワーによる一次レビュー及び医師による二次レビューの、2段階方式でのレビューを経て、データ固定を行う方法により作成した。作成したデータベースを用いて、麻酔薬、抗痙攣薬、鎮静薬、抗精神病薬を含む中枢神経系の抑制作用を持つ薬剤とその他の薬剤を原因とする薬剤性有害事象について比較を行い、さらに、その薬剤性有害事象を、手術を受けた小児(手術群)と手術を受けていない小児(非手術群)で比較を行い、検討した。 観察期間内に944人の小児患者が入院し、手術群234人、非手術群710人であった。薬剤性有害事象は225人、480件起こり、中枢神経系の抑制作用を持つ薬剤による薬剤性有害事象は81件発生した。特に致死的な薬剤性有害事象の発生頻度は、中枢神経系の抑制作用を持つ薬剤で12%、他の薬剤では2%であった(p<0.001)。麻酔薬による薬剤性有害事象では、手術群で40件のうち2件が致死的であり、非手術群で11件のうち2件が致死的であった(p=0.049)。 中枢神経系の抑制作用を持つ薬剤はその他の薬剤と比較して致死的となる薬剤性有害事象が多く、特に麻酔薬を使用する際に、非手術群は手術群と比較して危険性が高いことを明らかにした。(J Pediatr Pharmacol Ther, accepted)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画調書通り、順調にデータベース作成を行っており、薬剤性有害事象に関しては危険性の高い薬剤の評価を行った。 引き続き薬剤性有害事象に留まらず、手術や検査などを原因とする医原性有害事象に関しても評価する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で作成したデータベースにより、薬剤性有害事象に関しての評価を行った。さらに、手術や検査などを原因とする医原性有害事象に関してレビューを行い、改めて有害事象の原因を手術、手術以外の手技、看護、その他と複数に分類し、データ固定を行い、新たなデータベースの作成に着手し、解析する。今後、世界的に有用なエビデンスにするために医療安全研究を行っている識者と建設的な議論を行い、得られたデータを論文化する。
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次年度使用額が生じた理由 |
薬剤性有害事象に関するデータの報告に関して、おおよそ順調な遂行が実現し、データベースの作成が計画よりも順調であり、人件費の支出が抑えられたために当該助成金が生じた。 今後、新たに医原性有害事象に関してのデータ固定を行い、さらなる報告ができるようデータベースの作成を行う予定である。そのため、人件費の支出が予想される。 次年度は、データのとりまとめ状況ならびに解析の状況により、学会発表や議論、論文発表等を予定しており、解析と発表の質をより向上させるために助成金を活用する計画である。
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