研究課題/領域番号 |
17K09255
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研究機関 | 千葉県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
鍋谷 圭宏 千葉県がんセンター(研究所), 食道・胃腸外科, 部長 (40322028)
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研究分担者 |
山田 みつぎ 千葉県がんセンター(研究所), 看護局, 看護師長 (80623389)
石渡 麻衣子 千葉県がんセンター(研究所), 看護局, 主任看護師 (50728219) [辞退]
夏井 あすか 千葉県がんセンター(研究所), 看護局, 技師 (30831010)
辻村 秀樹 千葉県がんセンター(研究所), 外来化学療法科, 部長 (70399450)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 化学(放射線)療法 / 双方向性通信システム / 食と栄養 |
研究実績の概要 |
これまでに、千葉県がんセンター栄養サポートチーム(NST)・外来化学療法科・通院化学療法室・看護局・研究所が中心となり、化学療法中のがん患者の在宅時の情報を迅速に把握する携帯端末相互情報交換システムを運用してきた。本研究ではこの運用過程で経験した問題点を踏まえて、汎用性の高い相方向性通信アプリ(Chiba CCアプリ)の開発による在宅がん患者の支援を目的としている。 具体的には、既に開発された基本的なシステムを改良し、患者の端末で入力・画像送信・メッセージ書込みなどが出来るようにして、副作用などの患者情報を迅速に医療機関に届け、適切な対応(双方向性通信)が可能なChiba CCアプリとシステムの開発を目指す。医療者側から患者には、症状に対して必要な対処法・食事の工夫などの情報などを端末から届け、来院警告機能等の付加を目指す。 本研究で患者に適切な情報配信を行うには、アプリ機能の充実と共に、様々な状況に対応した指導が可能でなければならない。従って、アプリの開発と共に、化学療法を含む様々ながん治療において患者が積極的治療を継続するための適切な食事栄養管理法を検討する。特に近年増加した高齢の通院がん治療患者への栄養支援は難しく、患者自身のセルフケア向上や医療現場との迅速な情報交換が必要である。また、化学(放射線)療法を入院で施行後、退院後に副作用で苦しむ患者も多く、特に栄養障害に陥りやすい消化器がん患者への長期的な栄養サポートを入院時から個別的に考えるべきである。 当院では、NSTを含む多職種による「食と栄養トータルケアプロジェクト」を立ち上げ、化学療法施行がん患者に幅広く個別化された食事栄養管理を行ってきた実績がある。今後は、在宅でのメニュー考案や、調理の一助となるように症状を踏まえたがん患者のための調理法やレシピを整え、Chiba CCアプリを用いた食事栄養支援に役立てたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の最初のアプリの開発を踏まえ、2018年度から以下のアプリ改修に取り組み、作業中である:(1)アンケート機能の改修、(2)複数選択の追加、(3)自由入力の追加、(4)選択項目毎の点数と並び順の設定、(5)利用者向けアンケートに、利用者には見えない管理者向けの設問を追加(管理者向けの設問は利用者には見えない、管理者向けの設問は集計の絞り込みに使用する)、(6)管理者によるアンケート結果閲覧機能の追加(個別のアンケートを閲覧可能にする、上記追加にあわせたアンケート結果集計機能の改修、アンケート結果の絞り込み検索機能の追加)。 同時に、様々な症状や病態に対応出来るような情報・指導内容を充実させるべく、入院でも外来でも化学療法を含む様々ながん治療において、積極的治療が栄養不良により中断されることのない栄養サポートの方法をNSTや外来化学療法科・通院化学療法室のスタッフを中心に検討している。特に消化器がん患者への適切な栄養サポートを入院中から考えて積極的に提供し、その情報に基づいて継続した外来での栄養指導を工夫している。これらの実績と経験が、アプリの改修・機能充実と共に、それを用いたタイムリーな情報としてがん患者の在宅支援に繋げられるように努力している。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度から開始した前記のアプリ改修を進める。大きな目標は、以下の2点である。(1)アンケート機能の拡張(複数選択とテキスト入力の追加)により、患者の意見をできるだけ容易に隈なく組み上げられるようなシステムの構築、(2)医療者側の管理機能の向上で(個別のアンケートへのタグ付けなど)、得られたデータの容易な集計・解析の実現。これらの改良を平成31年度早期に完了させて、新しいChiba CCアプリを実際に使用して、更なる改良の必要性の検討を行う。まず医療従事者での試用を行い、患者モニターでの運用を早めに開始する。患者からの意見を基に、更に改良すべき項目があれば、平成31 年度中に改良を加え、今後の応用範囲の拡大を目指したい。このChiba CCアプリとシステムが実用化すれば、化学療法患者だけでなく、緩和医療を受けている患者の在宅支援にも役に立つであろうと考えている。 また、指導やアドバイスすべき内容は、これまでの経験や実例を踏まえて蓄積し、より多くの医療スタッフで共有出来るような院内のシステムを構築したい。特に、化学(放射線)療法に手術を加えた集学的治療を行うがん患者も増加しており、特に術前治療後の在宅での適切なトータルケアは外科治療成績向上のために重要である。化学(放射線)療法の副作用や後遺症に対する適切な対処法の確立とともに、集学的治療も考慮したアプリ機能や指導内容を検討したい。また、栄養管理のゴールは口から食べることなので、これまでに院内で開発された独自のがん患者のための調理法やレシピをさらに発展させ、民間とも協働した食の開発を考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
アプリの開発の計画がまだ半ばであり、より高度なアプリの完成を目指した開発のために次年度に使用する予定とした。令和元年度に行う学会参加(情報収集)・アプリ開発と実際の試用、成果の公表、食の開発などに用いる予定とした。
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